動物画で知られた日本画家 小村 大雲(出雲市出身)

小村 大雲=平田本陣記念館提供
自宅に「動物園」つくり写生

 明治時代から昭和時代初期にかけて、優(すぐ)れた動物画や武(む)者(しゃ)絵(え)で知られた小(お)村(むら)大雲(たいうん)(1883~1938年)は、島根県を代表する日本画家の一人です。出身地の出(いず)雲(も)市平(ひら)田(た)町、平田本陣(ほんじん)記念館で8月30日まで、展覧会(てんらんかい)「大雲動物園」が開かれており、大雲の画(が)業(ぎょう)を振(ふ)り返ることができます。

 大雲は荒物(あらもの)商(しょう)を営(いとな)む家に生まれ、子どものころから絵を描(か)くのが好きでした。16歳(さい)の時、京都へ出て絵の勉強に励(はげ)み、17歳の時から各地の展覧会に出品し、相次ぎ入賞(にゅうしょう)します。

 1912(大正元)年には、画家の登竜門(とうりゅうもん)である文部省(現在(げんざい)の文部科学省)美(び)術(じゅつ)展覧会(文展(ぶんてん))で入賞し、日本画(が)壇(だん)にデビューします。それ以(い)降(こう)、6年連続で入賞を果たし、全国的な名声を高めていきます。人物、山水(さんすい)、花(か)鳥(ちょう)、動物など画題は多(た)岐(き)にわたりました。中でも動物の絵が多く、武者絵も評(ひょう)価(か)を集めました。

大正天皇の御物となった馬を9頭描いた作品と同じ構図で、小村大雲展「大雲動物園」に展示されている金屏風=出雲市平田町の平田本陣記念館
 馬を描き文展に入賞した絵は宮(く)内(ない)省(しょう)(現在の宮内庁(ちょう))に買い上げられ、大正天(てん)皇(のう)の御(ぎょ)物(ぶつ)(=皇(こう)室(しつ)の私(し)有(ゆう)品(ひん))となりました。「大雲動物園」に展(てん)示(じ)されている「馬が9頭行く」絵は、文展入賞作を基(もと)に同じ年代に描かれました。何事も「うまくいく」という語(ご)呂(ろ)合わせで、縁(えん)起(ぎ)のいい金屏風(きんびょうぶ)です。

 京都に住んでいた時、大雲ははじめ、動物園に行っておりの前で何日も折りたたみ椅(い)子(す)を広げ、ライオンやトラなどの毛(け)並(な)みを鉛筆(えんぴつ)の濃淡(のうたん)だけで生き生きと描きました。

 しかし、注文が多く忙(いそが)しい人気画家なので、モデルの動物を間近に置きたい思いがありました。そのため、動物画を極(きわ)めようと自(じ)宅(たく)にサル、キツネ、犬、猫(ねこ)、リス、クジャク、七(しち)面(めん)鳥(ちょう)など、さまざまな動物を飼(し)育(いく)。惜(お)しみない努力で、写生に明け暮(く)れます。

 やがて動物画の大(たい)家(か)として全国に知られるようになり、近所の人たちは親しみを込(こ)めて画室を「大雲動物園」と呼(よ)びました。今、開かれている展覧会のタイトルの由(ゆ)来(らい)になっています。旧(きゅう)久邇宮(くにのみや)邸(てい)(東京)のふすま絵や、明治神宮(じんぐう)(東京)外苑(がいえん)にある聖徳(せいとく)記念絵画(かいが)館の壁画(へきが)など、名誉(めいよ)な作品も表しています。

 趣(しゅ)味(み)も幅(はば)広く、能面(のうめん)を彫(ほ)ったり、陶(とう)器(き)も焼きました。また、武者絵を描くモデルに利用した甲(かっ)冑(ちゅう)のコレクターとしても知られました。

 1938(昭和13)年、平田に帰省中、54歳の若さで急(きゅう)逝(せい)しました。

2020年7月15日 無断転載禁止

こども新聞