75年ぶりの「おかえり」 遺族にアルバムを返還

亡き父の残したアルバムに見入る細田善男さん(左から2人目)=松江市東津田町、島根県松江合同庁舎
 太平洋戦争末期にフィリピンへ出征し、34歳で戦死した松江市乃白町出身の細田仙次郎さんのアルバムが15日、長男の善男さん(79)=松江市乃木福富町=のもとに返還された。旧日本兵の遺品返還に取り組む米国のNPO法人・オボンソサエティ(オレゴン州)を通じ、遺族会が特定した。善男さんは「75年たって返ってくるとは思わなかった」と目を細めた。

 仙次郎さんは幼い善男さんら家族を古里に残して1944年に出征した。遺族の元には45年2月、フィリピン・ルソン島で戦死したと伝わったが、遺骨や遺品は戻ってこなかった。

 当時、米兵は戦地に残された日章旗や日本刀といった遺品を、記念品として本国に持ち帰った。時がすぎて元米兵が亡くなり、家族が旧日本軍の遺品を見つけるケースが相次いでいる。オボンソサエティは遺品を引き受け、返還している。

 アルバムは海軍兵士が持ち帰ったもので、米国の遺族が返還を希望したという。細田さんが名前を記載していたことから日本遺族会(東京)が島根県、松江市の両遺族会と協力して特定した。

 表紙をめくると約40枚の写真がきれいにとじてあり、仙次郎さんと戦友の写真や、古里の松江城を写したものもあった。

 出征前にこたつで家族とくつろぐ写真は、同じ写真が善男さんの自宅にも保存してあり、アルバムを特定する決め手となった。

 15日、松江市内であった伝達式には、善男さんら遺族5人が出席。善男さんは「おふくろも話してくれなかったので、おやじの思い出はほとんど分からない」としながらも、写真一枚一枚に見入っていた。

 善男さんは、朝晩に拝んでいる仙次郎さんの仏壇に「返ってきたよと言いたい」と笑顔で話した。

2020年7月16日 無断転載禁止