在日米軍のコロナ感染/信頼関係損ねる事態だ

 在日米軍基地で新型コロナウイルスの感染者が急増している。特に米軍専用施設が集中する沖縄では確認された感染者が130人を超えた。

 日本政府は、世界で最も感染者数が多い米国を入国拒否の対象国としているが、在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定に基づいて、基地に直接入る米軍人は入国拒否の対象となっていない。

 感染者の急増によって、基地で働く日本人従業員や一般市民への感染拡大が懸念される。

 これは沖縄だけの問題ではない。三沢基地(青森県)や岩国基地(山口県)、佐世保基地(長崎県)などでも米軍関係者らの感染が確認されている。

 さらに、岩国基地で感染が確認された3人の米軍関係者は羽田空港に入国後、「レンタカーで移動する」と申告しながら、実際には検査で陽性が判明する前に民間機を使って岩国まで移動していた。日米間の信頼関係を損ねる「虚偽申告」だ。

 河野太郎防衛相が「極めて由々しき事態だ」として、米側に厳格な処分と再発防止の徹底を申し入れたのは当然だろう。

 問題なのは、感染者の行動履歴などに関する十分な情報が地元自治体には提供されていないということだ。行動履歴が分からなければ濃厚接触者の追跡調査も行えず、市中感染に対処できない。玉城デニー沖縄県知事は15日、河野防衛相と会談し、日本政府から米軍人らの検査徹底や行動履歴の情報提供を米側に申し入れることや、地位協定の見直しを要請した。

 在日米軍基地の運用には、地元自治体との信頼関係が不可欠だ。米軍は詳細な情報を自治体に提供し、感染拡大の防止に努めるべきだ。日本政府も米側にさらに厳しい対処を求める必要がある。

 日米地位協定は在日米軍の法的な特権的地位を認めており、基地に直接入る米軍人には日本の国内法が原則として適用されない。日本側での検疫も行えず、入国後に基地の外に出るのも自由だ。感染者の入国を防ぐ水際対策の「抜け穴」になっていると言えるだろう。

 沖縄では、米国の独立記念日である今月4日前後に、基地外にある飲食店などでパーティーが開かれ、多くの米軍関係者らが参加していたという。玉城知事が「米軍の感染防止対策に強い疑念を抱かざるを得ない」と指摘する通り、危機意識が欠落している。

 米軍はクラスター(感染者集団)が発生したとみられる普天間飛行場などを「ロックダウン」(基地封鎖)したと説明したが、それで十分なのか。また、基地外にある民間のリゾートホテルを借り上げて、海外から赴任してきた米軍人らの隔離施設に利用していた。なぜ基地内で対処しないのか。

 日米間では2013年の日米合同委員会の合意で、米軍基地内で感染症が発生した場合、地域を管轄する保健所と情報を共有することとしている。しかし、米軍は3月末に、安全保障上の理由から世界各地に展開する米軍基地や部隊ごとの感染者数について公表しない方針を明らかにした。

 沖縄でも米軍側は当初、県に感染者数は公表しないよう要求。交渉の結果、県が数字を公表することは妨げないと方針を一部転換した。自治体任せでは、対応には限界がある。政府が前面に立って米側ときちんと交渉すべきだ。

2020年7月16日 無断転載禁止