実業家と不遇なお札

 60作目を迎える来年のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の主人公は、幕末から明治を生きた実業家・渋沢栄一(1840~1931年)。約500企業を育て「日本資本主義の父」と呼ばれる。福沢諭吉に代わる「1万円札の顔」といった方が通りがいいかもしれない▼最新の偽造防止技術を反映させる狙いで、紙幣は2024年度上期に全面的に刷新される。04年以来の「衣替え」で、5千円は女性教育の先駆者・津田梅子、千円は近代医学の基礎を築いた北里柴三郎の肖像画へ。1万円の顔交代は40年ぶりだ。ここである疑問が頭をよぎった。もう一つの紙幣である2千円札は? 流通枚数が少ないため変更しないという▼2千円札が発行されたのが、20年前のきょうのこと。沖縄サミット開催を記念しており、表の図柄は首里城の守礼門が描かれた。発行当時は斬新なデザインが注目を集めたが、筆者は6年前に沖縄を訪ねて以来、お目にかかっていない▼それもそのはず、現金自動預払機(ATM)で利用できるのは沖縄など一部の銀行のみ。需要の少なさから03年度を最後に製造もされていない▼現金の支払いに使う紙幣を減らせるため、欧米主要国では20ドル紙幣など「2のつくお札」は一般的だが、日本ではなじまなかった。来年の大河ドラマで脚光を浴びる実業家だったら、不遇なお札をもっと有効活用できたのではと、つい想像してしまう。(健)

2020年7月19日 無断転載禁止