紙上講演 三菱総合研究所主席研究員 松田 智生氏

松田 智生氏
 ポスト・コロナ時代の働き方

  地方創生へ逆参勤交代

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が21、22日、松江、米子両市でそれぞれあった。「ポスト・コロナ時代の働き方」と題し講演した三菱総合研究所(東京都)主席研究員の松田智生氏(53)が、都市部の会社員が地方で一定期間働く「逆参勤交代」を提唱し、「地方創生の鍵はリモートワーカーを呼び込むことだ」と説いた。要旨は次の通り。

 新型コロナウイルスで首都圏の企業では在宅勤務が急速に増え、今後も希望する人は多い。ただ、通勤時間の減少や家族との時間が増えたというポジティブな意見がある一方、仕事のスペースを確保できない、子どもがいると仕事にならないといったネガティブな意見もある。これを解決するのが在宅以外のサテライトオフィスをつくることだ。

 逆参勤交代は地方で期間限定でリモートワークをすること。週に数日は本業、残りは地域のために働く。東京の社員は心身のリフレッシュになり、企業の働き方改革にもなる。受け入れる自治体側は地域に思い入れを持つ「関係人口」や地域の担い手の獲得、さらにオフィスや住宅の需要、消費の拡大につながる。社員(本人)、企業、自治体それぞれにプラスなことばかりだ。

 これまでの地方創生は観光やインバウンド(訪日外国人客)に頼り過ぎていた。新型コロナで当分は集客が見込めない。これからは観光客ではなく生活者を呼び込むべきだ。首都圏と近畿圏の大企業の従業員は約1千万人おり、そのうち1割が年間1カ月、地方に逆参勤交代をしたら1千億円の消費を生む。この市場を取り込もう。

 逆参勤交代を実現させるためには、官民が連携してプラットフォームをつくることが必要だ。課題となる交通費や滞在費を企業1社で持つのは難しい。このプラットフォームで交通費やオフィス、住まいを共有し、費用負担を軽減する。またホームページで地域情報を発信し、首都圏の企業とのマッチングを円滑化する。企業に対する減税や補助などの制度設計を行うことも提唱している。

 これまでに国内の6市町村で、リモートワーク体験や地域のキーパーソンとの交流などを行う「トライアル逆参勤交代」を実施した。コロナが落ち着いたら山陰でやりたい。

2020年7月23日 無断転載禁止