コロナ対策指標/国は先頭から逃げるな

 専門家による新型コロナウイルス感染症対策分科会は、状況を4段階に分けて対処する案を政府に提言した。これを基に政府は都道府県が地域の状況に応じ対策を強化する判断指標を作成する。

 国内の新規感染者は連日最多を更新し、岐阜県が独自の非常事態宣言を出すなど既に対策を強化した自治体は多く、現状を後追いする形だ。しかも政府は緊急事態宣言の再発令を否定する一方で、コロナ対策の判断を地方に丸投げする印象もある。国が先頭から逃げるようなことは許されない。

 政府が「社会経済活動を全面的に縮小させる状況ではない」(菅義偉官房長官)と宣言再発令を避けるのは、国内総生産(GDP)や税収の落ち込みを止め、休業補償など追加支出を抑えたいためだ。だが、その事情は地方も同じではないか。

 提言は、60歳以上の新規感染者、受け入れ可能な重症者病床などの数値で感染状況を4段階に分類する。下から2番目を現在の東京や大阪が当てはまる「漸増段階」とし、その上を「急増段階」とした。漸増から急増へ進む兆候が出た時点で、飲食店に休業、個人に夜の街への外出や県境をまたぐ移動の自粛などを要請するよう求める。国による緊急事態宣言は、最悪に当たる「爆発段階」を防ぐ際に発令する。

 なるべく経済を止めず、国会召集が必要な新型コロナウイルス特別措置法改正には時間をかけ、できる範囲で感染拡大防止もやりたい。そのため現行の特措法のままで知事の裁量を広げようとの意図がうかがえる。

 風営法、建築物衛生法など特措法以外の現行法を積極的に適用してホストクラブなどへの立ち入り調査を進めているのも、宣言再発令なしで可能な対策強化を図る狙いだ。

 しかし経済を回し、人の動きを制限しないまま「もぐらたたき」のようにクラスター(感染者集団)を発見し二次感染を止めることを中心とする今の対策は対症療法にすぎない。都市部から地方に市中感染が拡大している状況では、大きく局面を転換する決め手にはなりにくい。

 さらに政府へ不信感が募るような経緯も発覚した。分科会の尾身茂会長は、観光支援事業「Go To トラベル」開始が8月から7月22日に前倒しされる際、状況判断にもっと時間をかけるよう提言したが採用されなかったと明らかにした。政府は「判断が直前になり混乱が生じる」(西村康稔経済再生担当相)と前倒しの結論ありきで提言を退けていた。

 専門家の意見を聞いて判断すると再三公言しながら、実際は政府の既定方針にお墨付きを得るため分科会を利用したと言われても仕方あるまい。

 「Go To トラベル」開始が感染拡大に拍車を掛ける可能性があるのに、政府は立ち止まらない。専門家にもストッパー役を期待できないとなれば、状況のさらなる悪化が続くのではと国民は不安を感じている。

 そして今度は地方に判断を委ねようとしている。「地方分権」と言えば聞こえはいいが、司令塔を欠けば、自治体の財政力の大小で対策の成否に差が出かねない。そのフォローの責任は結局、国に返ってくる。「これ以上、国の無策の中、感染者が増えるのは我慢できない」(尾崎治夫東京都医師会長)という現場の声を真摯(しんし)に聞くべきだ。

2020年8月2日 無断転載禁止