常連客の心遣い、今の支え 学生街の居酒屋

再オープンした店内で客と談笑する久冨学店長(右奥)=松江市学園2丁目、居酒屋「つきのわ」
 「居酒屋はお客さんとの触れ合いの場所。いい意味で遊びの延長だ」

 島根大にほど近い居酒屋「つきのわ」(松江市学園2丁目)には、学生や近隣に住む一人暮らしの人が集まる。店主の久冨学さん(33)が提供する自慢のおでんや小料理を味わい、地酒を楽しむ。学生が定食を頼めば、十分に腹を満たすこともできるアットホームな酒場として支持されている。

 「情勢をふまえてゆっくりやっていこう」

 久冨さんは、新型コロナウイルスの猛威を伝えるニュースには一喜一憂しない。できる感染対策を取りながら、神経質になりすぎないよう、以前と変わらない明るい店内の雰囲気作りを心掛ける。

 それでも今春は窮地に陥った。

 島根大が卒業式を中止した3月、大口の送別会が続々とキャンセルになった。ゼミやサークルも活動を自粛し、団体客が消えた。4月に入ると大学はオンライン授業に移行。学生に通学の必要がなくなってしまった。ほどなく新型コロナが松江市内で発生したことで、いつものように客を迎え入れたい気持ちはあったが、ぐっと我慢して臨時休業を決めた。1週間程度のつもりが、感染者が増えるにつれ、再開の日は遠ざかっていった。

 「いつ始めるのか」「この店が開かないと、ご飯難民ですわ」

 常連客からは店のオープンを心待ちにする言葉が次々と寄せられた。

 5月中旬から再オープンした。売り上げは昨年同期比で3割減になったが、変わらぬ常連の顔が少しずつ戻ってきている。

 各種のプレミアム飲食券も毎日のように利用がある。さりげなく、券を使ってボトルをキープしてくれる常連客の心遣いに今の店は支えられている。

 オンライン授業でも、わざわざ店に足を運んでくれる学生もいる。そこで、ご飯のお代わり自由と100円引きという新たな学割を用意。時に、店内の学生を見つけると「食え」と、山盛りのご飯を渡す。

 「今はなかなか来にくい状況かもしれないが、いつでも来店を待っている」

 普段の学生街に戻る日がいつになるのか分からないが、店の明かりをつけて待ち続ける。

2020年8月5日 無断転載禁止