工藤さん遺族証言を冊子に 14の家族愛伝える

託された遺品の記録を基に証言集をまとめた工藤智恵禰宜=松江市殿町、松江護国神社
 太平洋戦争で戦死した人たちと遺族の思い出を集めた証言集「千の約束-あふれる愛の物語」(A5判、114ページ)を松江護国神社(松江市殿町)の工藤智恵禰宜(ねぎ)(54)がまとめた。出征間際に家族と交わした言葉や戦地からの手紙、待ち続ける家族の思い出をつづる。遺族はつらい記憶を他人に語ることはなかったが、工藤さんと親睦を深めるうちに重い口を開き、手紙や日記といった遺品を託した。

 証言集は島根県東部の遺族から工藤さんが直接、聞き取った14の証言を写真とともに掲載している。山陰の寒空を想像しながら硫黄島から送られたはがき、仏間の畳がすり切れるほど無事を祈り続けた家族、戦死の連絡が届いた瞬間から10年も泣き続けた母…。どの証言も、遠い外地に赴いた兵士を思う家族の愛が読み取れる。

 タイトルとなった「千の約束」は1943年、中国で戦死した雲南市加茂町の内田安市さんが家族に残した巻物状の手紙に由来する。内田さんは長女の久代さんに「一日一つずつ約束を守りながら、お父さんの帰りを待ちなさい」と伝えて戦地に向かった。

 召集令状が来て出征まで1週間しかなかったが、手紙には「祖父母様を敬うこと」「母上様を助けること」と、千もの約束が丁寧な字で書かれていた。

 工藤さんは遺族から「千の約束」の話を聞き、島根県内であった講演で伝えた。6年前、神社専門紙に寄稿し、内田さんの家族愛を多くの人に伝えた。寄稿を目にした伊勢神宮の元禰宜・河合真如(しんにょ)さんから冊子にするよう勧められ、編集作業を経て今春まとめた。命日に松江護国神社を参拝する遺族が手に取っていくという。

 証言は女性が多い。工藤さんは「護国神社に女性神職が少なく、同性という気安さから話していただいた」と振り返る。その上で「家族と一緒にいるのが当たり前の時代になる中で、離ればなれになり、何年たっても色あせない、家族愛の強さを少しでも多くの人に伝えたい」と願っている。

 「千の約束」は1冊2千円。郵送でも取り扱う。問い合わせは同神社、電話0852(21)2454。

2020年8月6日 無断転載禁止