帰省にためらい 「家族に迷惑掛けたくない」

 会いたくても、帰らない-。島根、鳥取両県がふるさとへの帰省を慎重に考えるよう呼び掛ける中、都会地で暮らす出身者からはお盆の帰省を自粛するとの声が相次いだ。感染を広げたくないとの理由からだが、家族や友人と顔を合わせる機会が遠ざかり、複雑な思いを抱える。

 「浜田に帰るのは今はどうか…」

 浜田市出身の会社員、櫨山博文さん(60)=埼玉県在住=は帰省を見送った。実家に1人で暮らす母親(85)に電話で相談したところ難色を示された。4月にも帰省予定だったが、首都圏でPCR検査の陽性者数が増加していることを踏まえて断念。盆期間も「帰省すれば近所の人も気が付く。万が一のことがあって、母親に迷惑が掛かってもいけない」と心中を明かす。

 東京都内の会社に勤める松江市出身の平井聡士さん(48)も「自分がもしかしたら新型コロナウイルスを持っている可能性がある以上、帰れない」と自粛を選択した。昨年は仕事やプライベートで6回帰省したが、今年は正月に帰ったきり。「島根での感染者が少ない今は、外からウイルスを持ち込まないことが重要だ」と家族や友人とオンライン上でやりとりする。

 大阪府で感染者が増えた7月下旬に飛行機の予約をキャンセルしたという大阪市在住で島根県隠岐の島町出身の幼稚園教諭、村上真一さん(23)。帰省しても人に会いづらく、隠岐で感染を広げてはいけないと決断した。「大学進学で隠岐を離れてから、夏に帰省しないのは初めて。電話はできるし、今は我慢していつか気兼ねなく地元に戻りたい」と気持ちを入れ替える。

 帰省するかどうか思案中の人もいる。東京都内で飲食店を営む浜田市出身のシェフ、金川琢磨さん(38)は毎年、お盆の帰省に合わせて地元の生産者を訪ね、情報交換するのが恒例だった。店で提供する料理には島根県産食材をふんだんに使うため「農家を直接自分の目で見たり、信頼関係を築くことが大事だ」とする一方、「移動する中で感染してしまうと、店やお客さんにも迷惑が掛かる」と懸念する。

 山陰両県で暮らす親や家族の間でも、感染リスクを理由に帰省自粛を呼び掛ける声が目立つ。横浜市に住む長男に自粛を促した松江市島根町加賀の主婦、奥村正美さん(68)は「県外ナンバーの車が駐車していると近所に心配を掛ける。孫や長男の元気な顔を見られず、今年はつらい」と肩を落とした。

2020年8月9日 無断転載禁止