ビュッフェ形式の飲食店 不安打ち消す客の励まし

店内に並ぶ料理を確認する吉田詠一さん=浜田市朝日町、自然食ビュッフェ 菜の華
 新型コロナウイルスの感染拡大で、料理を自分で取り分けるビュッフェ形式の飲食店はとりわけ強い逆風にさらされた。トングの使い回しが接触感染につながるとされ、「自然食ビュッフェ 菜の華」(浜田市朝日町)も客足が一気に遠のいた。

 4月中旬、休業に踏み切ることを決断。経営するマキインターナショナル(同)の専務で料理長を務める吉田詠一さん(69)は「店をやめたほうがいいのか」とまで一時は追い詰められた。

 1カ月間の休業を経て、営業を再開してからは徐々に客が戻り始め、7月の売り上げは前年同月比で8割まで回復した。「コロナがなかったら、気が付かないこともあった」。先が見えず苦しかった時期を、今では前向きに捉えられるようになった。

 ビュッフェへのあまりの風当たりの強さに、2011年のオープン以来、地元の旬の野菜や魚をふんだんに使った料理で店の運営を軌道に乗せた自負は揺らいだ。それでも「外食を楽しみにしている人は多いはず。休業をチャンスと捉えよう」と自らを奮い立たせ、気持ちを切り替えた。

 休業期間中は従業員が力を合わせ店内を徹底的に清掃し、壁紙を貼り替えて店内の雰囲気も変えた。

 「もしダメだったら、業態を変えるしかない」

 腹を固めて臨んだ5月中旬の営業再開。トングを使う際にはめるビニール手袋を置く感染防止対策も講じたが、不安がなかったわけではない。

 その不安を打ち消してくれたのは、来店客の温かい言葉だった。「大変だろうけど、頑張ってね」。常連客だけではなく、初めて顔を合わせる客からも励ましの声を掛けられた。

 「いつもすてきな食事と真心のこもった対応、接客ありがとうございます」と一筆添えられたはがきは大切に保管している。

 顧客に支えられていることを「ここまで強く認識したことはなかった」。励ましに応えたいと従業員一人一人の目の色が変わった。苦難をともに乗り越えたことで一体感も生まれた。

 新型コロナは再流行しており、不安が完全に払拭(ふっしょく)されたわけではない。ただ、もう一波押し寄せたとしてもきっと乗り越えられそうな気がしている。

2020年8月10日 無断転載禁止