甘くない政界

 次以降を見据えた「消化試合」の空気が漂い、熱気なき自民党総裁選で菅義偉新総裁が誕生した。「ポスト安倍」として4度目の挑戦となった石破茂氏は厳しい現実を突き付けられた▼筆者は安倍晋三首相と一騎打ちになった2年前の総裁選も取材した。議員票を固めた安倍首相が有利を保ち論戦が深まらない一方、相手陣営のスローガン批判、閣僚への辞任圧力問題など次々と場外乱闘が勃発。裏を返せばそれほど激しかった▼今回は首相の突然の辞任表明と新型コロナが重なり選挙戦は簡略化。主要派閥が早々に菅氏支持で固まり「既定路線化」したためか石破氏の迫力は乏しく、明確な「敵」安倍首相不在に攻めあぐねた▼議員票が少ない弱点は変わりないが、前回は森友、加計学園問題や1強政治への批判を容赦なく展開し、首相の喉元に迫ろうとした。地方人気は「反安倍」の受け皿だった面もある。今回は菅氏と岸田文雄氏を批判する場面はなく、予備選の票もいまひとつ伸びなかった▼総裁任期は来秋までだが、菅氏も「場つなぎ役」で終わる気はないだろう。禅譲が流れた岸田氏は知名度向上に動く。「勇気と真心を持って真実を語る」。2年前と同じフレーズを繰り返した石破氏は、同じ戦法が通用しない局面に入った。正論を言い続けて首相になれる甘い世界ではない。30年以上政界に身を置く石破氏本人が一番分かっているはずだが。(築)

2020年9月15日 無断転載禁止