菅新内閣発足/国会論戦を受けて立て

 第99代首相に菅義偉自民党総裁が就任し、菅新内閣が発足した。安倍晋三前首相の退陣を受け、7年8カ月ぶりの首相交代になった。党内の派閥に属せず、世襲でもない菅首相は閣僚など一連の人事について、派閥の意向に左右されず「適材適所、改革意欲のある人」を登用すると強調していた。

 だが、新内閣の顔触れを見ると、政権の安定と派閥の力学を念頭に置いた再任や横滑り、再入閣の閣僚が目立つ。「経験重視」という見方もできるが、各派閥の入閣待機組の起用と合わせて考えれば、党内での権力基盤固めに腐心した陣容ではないか。

 しかし、失点回避の「守り」の姿勢だけでは、克服困難な課題を菅内閣は背負っている。

 党総裁としての任期は、安倍氏が務めるはずだった来年9月までだ。この間に、新型コロナウイルスの感染収束と戦後最悪とされる経済低迷からの脱却に道筋を付けるという重い使命を抱えている。世界の注目が集まる東京五輪・パラリンピックの開催可否についても最終判断を下さなければならない。

 日本の行方を左右する決定には、国民の理解と協力が不可欠だ。菅氏は自民党総裁に選出後の記者会見で「国民の皆さんに何事も丁寧に説明することが大事だ」と言及した。だが総裁選のさなかには、首相の国会出席について「行政の責任が果たせない」との理由で、重要な局面に限定すべきだと明言している。例によって日本より国会に縛られない他国の例を持ち出して訴えていた。

 どちらが真意か。森友・加計学園や桜を見る会のような問題で追及を受けるのがわずらわしいというのが本音であれば、「安倍1強」政治と同様に国会軽視との批判は免れない。

 16日召集の臨時国会は、菅首相を指名しただけで、18日に閉会する。野党は憲法53条に基づいて本格的な論戦ができる国会の召集を求めたが、たなざらしにされた。政府、与党は衆院解散・総選挙のタイミングを探るより先に、十分な会期を確保した国会日程を早期に示すべきだ。

 議論しなければならないテーマは山積している。コロナ対策では、10月に迫った観光支援事業「Go To トラベル」への東京都の追加や感染者の入院勧告見直しの是非がある。

 行き詰まりを見せるアベノミクスを継承するならば、その路線でどのように経済再生を図るのか明らかにしてほしい。消費税減税を巡る質疑も求められる。敵基地攻撃能力の保有問題や米中対立なども論議の対象だ。

 「自助・共助・公助、そして絆」。菅首相が総裁選で掲げたキャッチフレーズだ。コロナ下であっても「自助」、つまり自己責任での対応が優先されるのか。行政による「公助」の役割とは何か。

 衆参両院議員150人で結成された野党第1党、新「立憲民主党」の枝野幸男代表は「行き過ぎた自助を求める新自由主義か、支え合いの社会か」と対立軸にする構えを見せている。最高権力者の座に就いた以上、自身が目指す国家社会像を語る必要がある。

 菅首相が先頭に立って国会論戦に臨み、説明責任を果たす。派閥談合による自民党総裁・首相選出過程を否定し、国民の信任を得たいのであれば、それが第一歩になる。

2020年9月17日 無断転載禁止