世事抄録 政治家必読の「論語」

 ここ数カ月、新型コロナウイルスで家にこもり気味だったので読書時間がたくさんとれたこともあり、孔子の「論語」を全編通して読むことができた。読んだのはもちろん現代語訳だが、いくつか出版されているもののうち3種を一気に通読した経験は貴重であり、大きな収穫だった。

 孔子は今から約2500年も前の人物で、「論語」は孔子が死んで約500年後、弟子の末裔(まつえい)たちがまとめた「孔子とその高弟たちの言行録」だ。通読するまでは、古くさい道徳の本だろう、くらいに思っていたのだが、その内容の多くが現代社会に、いやひょっとすると未来にも大いに参考になることに驚嘆した。

 また、個人のための道徳観や人世訓にとどまらず、その多くの字数が、理想の為政者の在り方、つまり「政治論」に割かれているのも意外だった。

 一つ例を挙げる。ある政治家が孔子に政治について質問すると、孔子はこう言った。「政とはまさしく正です。もし貴殿が上に立つものとして正しさを率先したならば、だれもが正しくなろうとするでしょう」(ちくま新書・斎藤孝訳「現代語訳論語」より)

 字数の関係で一番短いものを紹介したが、「論語」にはこうした為政者の持つべき資質が多く示されている。与野党とも新リーダーが決まったが、日本の政治家の皆さんには、ぜひ一度「論語」を読んでほしいものだ。

(島根県津和野町・柊)

2020年9月17日 無断転載禁止