山陰両県 出前タクシー岐路に 国の特例処置終了、多くが撤退

宅配する弁当を積み込む、いやタクシーの従業員=松江市東出雲町錦新町8丁目
 新型コロナウイルスの影響で需要が高まったタクシーによる弁当の出前事業が岐路に立っている。事業は利用客が急減したタクシー会社の活路になると注目されたが、9月末で国の特例措置が終了。制度上は継続も可能だが、経済的負担が生じるため山陰両県では多くの会社が撤退した。一部で定着した地域があり、住民のために今後も続けるタクシー会社もある。

 人を運ぶタクシーを使った飲食物の配送は貨物事業の許可が必要になる。新型コロナの流行を受け、国は4月中旬から9月末まで特例措置として出前事業を認めていた。松江、米子の両市は独自に出前1件当たり約1200円の助成を開始。追い風を受けて島根で13社、鳥取で18社のタクシー会社が事業に参入した。

 緊急事態宣言の解除後は徐々に外出を自粛する人が少なくなり依頼は減った。松江市中心部のタクシー会社の担当者は「実績はほぼなく、月に1、2件ある程度だった」とする。

 一方、同市東出雲町揖屋のいやタクシーは現在でも週5日程度は注文が入るといい、地域によって差が出ている。同社は地域の飲食店と連携して出前の周知に力を入れた。出前は東出雲町や周辺地域が中心で、効率のいい運用ができているという。当初は子育て世代の注文が多かったが、今は独居の高齢者からの注目が多くなり、固定客が増えたとしている。

 松江、米子両市によると、タクシーの出前は助成が開始されてから8月末までに松江市内で1171件、米子市内で896件の利用があった。

 国交省は今月以降も事業を継続できるよう新制度を設けたが、1社12万円の登録料や運行管理者を充てる必要が生じた。両運輸支局によると、1日現在で事業継続を申請したのは、いやタクシーを含む松江市内2社と鳥取東部の3社のみとなっている。負担を覚悟して事業継続を選んだ、いやタクシーの森山雄宇社長は「地域に必要なサービスだ。タクシーの利便性が高まり、活用が広がるのは望むべきことだ」と話している。

2020年10月5日 無断転載禁止