個人情報、公表抑制的に 新型コロナ、相次ぐ誹謗中傷

 新型コロナウイルス感染者の個人情報について、山陰両県の自治体が年代や性別を非公表にするケースが出ている。コロナが初めて確認された春には公表していたものの、感染者への誹謗(ひぼう)中傷が相次いだことを受け、個人が特定されかねない情報の公表を慎重にし、行動歴など感染拡大防止につながるものに絞る傾向となった。住民からも積極的な情報提供を求める声は少なくなっており、感染拡大防止と人権への配慮のバランスを取ろうとする意識変化がみられる。

 「年齢と性別、同居の形態を通じ、2人の情報を重ね合わせると、特定につながりかねない」

 9月25日、島根県の丸山達也知事の記者会見。県が前日発表した浜田市の新型コロナ感染者2人のうち、1例目の50代男性と同居する感染者の年齢と性別を伏せた理由を説明した。7月の雲南市職員3人の感染確認時も2、3例目の年齢は非公表。厚生労働省が2月に出した通知では、年代や性別は公表する情報に分類されるが、浜田、雲南のケースとも関係性から個人が特定されかねないとして、独自に判断した。

 自治体が神経をとがらせる背景には、誹謗中傷の問題がある。

 鳥取市で7月に判明した感染者の30代男性は、市職員だったこともあり、市が勤務先や性別を公表。結果的に男性への中傷が起こり市保健所の大塚月子保健医療課長は「感染者を守らないといけないのに逆に苦しめた」と反省する。その後は慎重に本人への同意を取るようになり、8月4、6日に判明した感染者は、感染拡大の可能性が低いと判断した上で、性別は明らかにしなかった。

 個人情報の公表に対しては、住民から行政に寄せられる声も変わってきた。

 島根県県民対話室によると「知事への提案箱」への投書は、県内で初めて感染者が出た4月は未知のウイルスへの不安から公表を求める声が圧倒的に多かったものの、最近は聞かれなくなった。9月には「(感染者を守るために)積極的な公表をしないで」との意見が3件寄せられた。福頼尚志企画員は「自分が感染した時に中傷を受ける恐怖心が見えてきたのではないか」としている。

 関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は、自治体が公表する情報が極端に抑制的になると「かえって社会の混乱を招く恐れがある」と指摘。「非公表の理由を一緒に発表するのであれば理解できる」とし、丁寧な説明が不可欠とした。

2020年10月7日 無断転載禁止