国民のために働く

 「国民のために働く内閣をつくる」と菅義偉首相が就任時に宣言した時、「内閣とは本来そういうものじゃないの?」と違和感を覚えた。今まで野党に所属していたのならともかく、自身もその中枢にいたのに、前の内閣は国民のために働いていなかったと言っているようなものだ▼確かに前政権は、「お友だち」や支援者のために働いているのかと疑念を抱かせる森友、加計学園や桜を見る会の問題を起こした。その反省から政治の原点に返って国民に目を向けたのか▼発足から、もうすぐ1カ月。一国民として憂慮する問題が起きた。日本学術会議の会員候補6人が、菅首相から任命を拒否された。政府方針に異を唱えた学者を排除したようにみえる一方、拒否の理由が説明されたとは言い難い▼首相就任前の自民党総裁選で政策の方向性に反対する官僚には「異動してもらう」と言ったことも合わせて考えると、「政府に盾突くな」と言わんばかりの厳しい姿勢がうかがえる。この先、もの申す文化人や芸能人、首長が国に批判的な自治体なども思わぬ扱いを受けるかもしれない。理由も示されず恣意的に▼そんな疑心暗鬼を生じさせる政権の始まりだ。学術会議は組織の在り方が新たな議論の的になりつつあるが、6人の拒否理由が曖昧なままでは懸念は消えない。首相は丁寧に説明してほしい。説明することも「国民のために働く」ことである。(輔)

2020年10月14日 無断転載禁止