眉をうかがう?

 マスクが日常化したことで、休みの日は無精ひげを気にせず出掛けるようになった。半面、マスク姿同士で話す場合は、表情が分かりにくい。そこで、相手の目や眉の動きに注意するようにしている。ことわざに「目は口ほどに物を言う」とあるし、眉は感情を一番よく表すとされるからだ▼微妙な感情を映す眉は人間にしかない。そう思っていたら、手塚治虫の漫画『鉄腕アトム』はロボットなのに眉があった。ディズニーの動物アニメを参考にしたとされるが、本家の『ミッキーマウス』は時代によって眉があったり、なかったりする。ただ眉があれば、その描き方で子どもや、言語が違う海外でも喜怒哀楽が伝わりやすい。さすがは手塚先生だ▼一方、レオナルド・ダビンチの名画『モナリザ』に眉はない。ルネサンスの時代、西欧の貴婦人たちは流行で眉を剃り落としていたという。こちらは眉がないことで、謎めいた微笑が際立つ▼『万葉集』の時代から眉に関心が強かった日本も、公家や既婚女性は、モナリザのように眉を剃り落とす慣習が近世まであった。心の動きが顔に表れないようにしたのだろうか。辞書には、その名残で「眉を落とす」の意味は「結婚して妻になること」とある▼マスク生活は、まだ当分続く。この機会に眉の動きに敏感になれば、家庭でも配偶者の顔色ではなく、眉をうかがうことで波風が立つのを防げる。(己)

2020年10月18日 無断転載禁止