母親介護の日々、歌集に 和歌研究者・兼築早稲田大教授

著者の兼築信行教授(右)と亡き母の福間和喜子さん=2017年11月、兼築信行教授提供
 松江市出身で早稲田大文学学術院の兼築信行教授(64)が歌集「改元前後 2016-2019」(花鳥社)を、亡き母・福間和喜子さん(享年86)の一周忌に出版した。和喜子さんを松江の実家から埼玉の自宅に連れ帰り、介護し、みとるまでの3年間に詠んだ866首の短歌を収録。母への思いや、古里への恋しさがにじむ1冊となった。

 兼築教授は平安時代後期から鎌倉時代を中心とする和歌の研究者だが、歌人としてはアマチュア。詠み手として歌の本質に迫ろうと、日々の心境を会員制交流サイト(SNS)につづり始めた。

 そんな折、松江で1人暮らしをしていた和喜子さんが栄養失調症のため動けなくなっているとの報を受けた。埼玉県の自宅に連れ帰り、在宅介護を始めることになり、自然とその日々を短歌に詠むようになった。

 「くちにあふとそれもことわりわがあぢのもとをたどればははのて料理」「シヨートステイはじめてむかふははのてににはのあぢさゐきりてもたせつ」など、何十年ぶりの母との生活を詠んだり、体調を崩して緊急入院した母の面会に病院通いした日々を描写したりして、SNSに投稿。すると友人や知人から「返歌」が来るようになった。そのやりとりが面白く、日課となった。

 臨終の様子を詠んだ作品も収録。「しなむとするははのみかほのいとしくてひとさしゆびのはらをあてがふ」「心臓のうごきをしめすなみのかたちなみうたずなりてははしにたまふ」など、母の最期をリアルに表現した。

 「しみじみとしじみのしるをすふときしみにしみしみてまつえはこひし」など母との暮らしの中で、古里を思い浮かべる場面も多い。兼築教授は「母の介護、みとりという時間の中で、どんなに私が松江を恋しがっているかが浮かび上がってきたので驚いている」と振り返った。

2020年10月23日 無断転載禁止