世事抄録 シニアの密ひそかな愉たのしみ

 梅干し作りを始めたのは、退職の翌年。大学時代、鹿児島で痛飲した芋焼酎の湯割りに、自家製の梅干しを入れたいという単純な動機であった。

 初めて漬けた梅干しは、固くて塩辛い、シワシワの失敗作であった。湯割りに入れてつついてもほぐれず、香りも立たない。ほろ苦いデビュー作であった。以後、うまい湯割りを目指し、梅の種類、塩分濃度、殺菌方法など、文献を調べては、毎年の実地に生かしてきた。

 梅は安価で手に取りやすい地元産。香りがあり、程よく熟成した粒ぞろいのものが最高だが、なかなか出合えない。その年店頭に並んだものを見て、作戦を立てる。塩は粗塩。精製塩だとあまり浸透しない。器具の洗浄は消毒用エタノールを使う。ホワイトリカーを使うなら丹念に施す必要がある。特に梅干しに直接接触する落としぶたは念入りにする。

 最も気を使うのは塩分濃度だ。16~20%の範囲の中で揺れ動く。濃度を上げれば腐敗は少ないが、味に影響する。「規制をすれば疲弊する」とは、コロナ禍の経済だが、梅干し作りも同様。足踏みしては展望が開けない。決断し、間髪入れず手を打つ事が大事である。

 ここ数年、やっとうまい梅割りが飲めるようになった。15回目の今年、天日干し後の熟成期間が間もなく終わる。焼酎は「さつま白波」、肴(さかな)は鯨刺し。シメは梅茶漬け。舞台は整っている。

 (浜田市・清造)

2020年11月19日 無断転載禁止