続・ペンと乳(17) 大人の都合

子への声掛けは難しい

 子に対し「ちょっと待って」「後でね」といった言葉はなるべく使わないようにしたいのだが、思ったより難しい。

 例えば料理中、子に「抱っこ~」「これ読んで~」とか言われたら作業の手を止めて応じてやる。それくらいなら多少忙しくてもできるだろうと考えていた。

 しかし、娘が実際に呼び掛けるのは「待って」以外言えない状況の時なのだ。弟の沐浴(もくよく)の最中、片手に弟の頭、もう片手でガーゼを持って洗っている時とか、弟のうんちが出て、片手で両足を押さえ、もう片方でお尻を拭いている、そんな時に限って、呼ばれるのである。だからつい「待って」「後で」を連発してしまう。

 何かほかに言い方はないか考えたこともある。「おめめで抱っこしてるよ~」と視線だけ向ける(自分でも意味が分からないとは思うが)とか、「うんいいよ! これが終わったらね」とか…。結局待たせることになるのだが。

 何とかやり過ごし、ある程度落ち着いてから娘を見やると、1人で絵本を開いていたり、もう別のおもちゃで遊んでいたりしている。「終わったよ」と声を掛けても反応は悪い。やっぱり「その時」に応じてやることが、何よりも大事なんだろう。

 子の視点に立てば、すべて「大人の都合」でしかない。何かしてほしいときに「待って」と言われても、親の事情など知ったこっちゃない。

 子が泣かなかったり、大人の言うとおりにしたりすると「いい子」「お利口」「偉いね」などといろいろな人に言われる。逆に泣いていると「いい子だから泣かないの」と言われたりする。そのたびに私は「騒いだり、泣いたりする子は、いい子じゃないのか」と、ちょっと反発したくなる。泣かないのがいい子だなんて、決してそんなことはないだろう。泣けるのは素晴らしいことだ。

 そういう経験の積み重ねで、子は「静かにするのがいい子なんだ」と学習するのだろう。でも大人に「いい子」と言ってもらうのが目的になっては、意味はない。子への声掛けは、いつだって難しい。

2020年11月21日 無断転載禁止