岐路に立つJR木次線/マイレール意識醸成を

 宍道駅(松江市宍道町)と備後落合駅(広島県庄原市)を結ぶJR木次線(81.9キロ)が岐路に立っている。マイカーの普及や人口減少の影響で沿線の利用者数が低迷しているのに加え、集客を支えている、人気のトロッコ列車「奥出雲おろち号」の運行が、2022年度以降は未定であることが分かった。危機感を持ち利用促進を図らなければ、18年3月末で全線廃止になったJR三江線(江津-三次駅間、108.1キロ)の二の舞いになりかねない。

 20日に開かれたJR西日本米子支社の牧原弘支社長の定例会見は、沿線住民や関係者に重く受け止められたに違いない。おろち号について「21年度までは運行できる」としたものの、22年度以降は「検討中」と明言を避けたからだ。

 1998年に運行を開始したおろち号は現在、金、土、日曜を中心に出雲市駅と備後落合駅間を走っている。本年度は新型コロナウイルスの影響で4月の運行開始直後に運転を中止し、8月21日に再開。最終日の11月23日までの運行日数は当初計画(153日)の4割にとどまったものの、親子連れや観光客の人気を集め、木次線の利用実績に貢献している。

 ただ、新型コロナの収束が見通せない中、JR西は22年度以降の運行について明言しなかった。おろち号で使用する車両の老朽化が進んでいることも影響しているだろう。仮に運行がなくなれば、路線維持に影を落とすのは必至だ。

 木次線の利用実績は下降線が止まらない。JR西が誕生した1987年度に663人だった平均通過人員(1日1キロ当たりの利用者数)は、2019年度は190人まで減少した。

 沿線関係者も手をこまねいていたわけではない。松江市、雲南市、島根県奥出雲町、広島県庄原市の沿線4市町、島根県などが18年3月に、木次線利活用推進協議会を発足。JR広島駅新幹線口(広島市)をバスで出発し、途中で木次線に乗り換えて雲南市や奥出雲町のグルメや観光地を楽しんでもらうツアーなどを行った。それでも数字は下降線をたどったままで、JR米子支社の牧原支社長は定例会見で「大変憂慮している」との認識を示した。

 関係者が危惧するのが、18年3月末で廃止された三江線の二の舞いだろう。沿線市町や県、住民団体が活性化協議会を立ち上げ、11年度から利用促進などの活性化事業を展開した。にもかかわらず、利用低迷に歯止めをかけることはできず、16年度の平均通過人員はJR西管内では最少の83人だった。

 JR西が挙げた廃止理由は、沿線人口の減少に伴う利用者減と2度の水害を踏まえた災害リスクの高さだったが、活性化の機運が地元に広がらなかったのも一因。当時、JR西幹部から「利用者を増やそうという気概が地元から伝わってこない」という苦言も聞いた。

 三江線を参考にすると、おろち号の先行きが不透明な状況下で、木次線沿線で取り組むべき課題は、まずは地元住民の利用促進を図ることだろう。「自分たちで乗って路線を守る」という”マイレール意識”の醸成が欠かせない。

 雲南市では4月、市民バスのダイヤ改正に合わせて、木次線との接続が改善された。こうした利便性をさらに高めつつ、路線を守るという機運を沿線全体に広めたい。

2020年11月29日 無断転載禁止