「近代日本経済の父」の精神

 年明け早々に気が早いと笑われそうだが、今年の顔の有力候補は、500もの企業を育てた「近代日本経済の父」渋沢栄一(1840~1931年)ではないか。今年のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」のモデル。福沢諭吉に代わる「1万円札の顔」としても有名だ▼幕末から明治の変革期を生きた実業家の渋沢は100年前、日本人移民を差別する排日問題の善後策を講じるため渡米してハーディング大統領と会見し、日米関係の悪化を防いだとされる。当時81歳。スペイン風邪の流行はまだ終息していなかった▼その2年後、10万人余りが犠牲となった関東大震災が発生。「復興事業を支えるのは民の力」という信念から経済界を巻き込み、罹患(りかん)者の収容や炊き出し、災害情報板の設置など、当時の政府では手が回らなかったきめ細かな対策を迅速に実行した▼翻って新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)される現代。残念ながら、渋沢のように身を粉にして国難に対応するリーダーが思い浮かばない。その分、われわれ一人一人が力を合わせて立ち向かう姿勢が求められている。渋沢の言う「民の力」の見せどころだ▼山陰でも昨年、コロナ禍で仕送りが減り、アルバイトもできず困窮する学生への支援が活発化した。ことさら「自助」を強調する宰相の下では、自発的かつ積極的な「共助」が重要になるだろう。「近代日本経済の父」の精神を受け継ぎたい。(健)

2021年1月2日 無断転載禁止