緊急宣言11都府県に/政治の意志を示す時だ

 政府は新型コロナウイルスの緊急事態宣言を栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県に再発令した。発令地域は首都圏4都県と合わせ計11都府県となり、都市部中心に関東から九州までに拡大した。

 菅義偉首相は首都圏に再発令する際、大阪などは感染者が減少傾向にあると評価していた。しかし、1週間もたたずに対象拡大に追い込まれた。見通しが甘かったと言わざるを得ない。ほかにも発令要請を検討中の県があり、全国的に広がる可能性もある。発令期間を1カ月弱の2月7日までにそろえたのも対策の「小出し」にならないか。

 若者らを中心に「行動変容」が進まず感染が収束しないのは、首相はじめ政府の政策、発言のメッセージが弱く、国民が危機感を共有できていないためだ。ウイルスが活性化する真冬の第3波は、これまでの経験則をはるかに超えている。事ここに至っては、経済活動を一時止めてでも感染拡大を抑え込むという政治の意志を示す段階だ。

 首相は正月休み明け時点では、宣言の大阪などへの対象拡大に否定的だった。年末に飲食店へのさらなる営業時間短縮要請を見送った首都圏の感染者数が「深刻」な水準と指摘する一方、「時短要請をした大阪は効果が出ている」と持ち上げていた。飲食店への対策さえ打てば成果が上がるとの短絡的な判断だった。

 ところが直後から大阪の1日の新規感染者は過去最多を連日更新。医療体制が逼迫(ひっぱく)し、当初慎重だった吉村洋文大阪府知事が発令要請に方針転換。大村秀章愛知県知事も年明けの感染急増を受け、政府に再発令が必要だとの認識を伝えていた。

 事態の急変に即応できていれば首都圏と同時の発令ができたのではないか。この判断の遅れは感染拡大を一層深刻化させかねない。政府は自治体との連携に穴がないか、改めて点検してほしい。

 首相が、2月7日までに成果が出なかった場合の対応を問われ「仮定のことは考えない」と述べたのも大いに疑問だ。国民にはそれぞれ生活設計があり、企業には事業計画がある。1カ月後に期間延長があるか否かの見通しは死活問題だ。飲食店中心の対策のみでは2月末にも東京の感染者は現状と同水準のままだとの専門家の試算もある。

 先々まで「仮定」して次の手を構想し、国民に説明責任を果たしながら協力を求めていくのは、政治が当然果たすべき義務であると強調したい。

 首相は昨年末、変異種がまん延する英国からの入国者を「1日1、2人だ」と述べた。実際には12月に1日約150人だ。これは異常事態に際し「たいしたことない」と考えてしまう「正常性バイアス」ではないか。「絶対に防ぐ」としてきた「爆発的感染」も今や主要な大都市圏で現実のものとなった。

 人の移動や接触を抑えきれなかった年末年始休みから2週間が過ぎる1月半ばには、さらに感染者数が膨らむ可能性も指摘される。政府の楽観的観測は「眉唾」だと国民はとうに気づいている。

 首相は正常性バイアスを排し「最悪の想定」も開示しながら、それを防ぐため今国民が何をすべきかを理を尽くして語るべき時だ。そして対策の「逐次投入」で様子を見ては追加を繰り返す悪循環から脱し、飲食店以外にも対策の総動員を再検討すべきではないか。

2021年1月14日 無断転載禁止