津和野中学校3年生 「死刑制度」に賛成?反対?

 津和野町立津和野中学校(同町町田)の3年生20人はこのほど、社会科の単元「司法制度とその課題」の中で「えん罪」と「死刑制度」について学んだ。2009年にスタートした裁判員制度や、鹿児島県志布志市などで起きた近年のえん罪事件について学んだ上で、死刑制度の存廃について考えた。

 生徒たちはあらかじめ死刑制度に対する自分の考えをまとめ、お互いに伝え合った後、社会の中に存在する存廃の声に耳を傾けた。アムネスティ・インターナショナルや死刑廃止を推進する議員連盟で会長を務めた亀井静香さんは、死刑制度に犯罪抑止効果がなかったり、えん罪の危険性があったりすることから、廃止を主張している。

 一方、全国犯罪被害者の会(2018年に解散)は、被害者の精神的苦痛や報道被害などを明示し、死刑の存置を主張している。この会で幹事を務めた、山口県光市母子殺害事件の被害者遺族の本村洋さんは、かつて加害者への死刑判決を強く求める姿がメディアで報じられた。

 裁判員制度は凶悪事件の第一審を市民が担当するもので、市民が死刑判決と向き合うことにもなる。生徒たちは数年後に自身が裁判員になる可能性があることを認識し、死刑制度というジレンマと対峙(たいじ)した。それぞれの意見を紹介する。


遺族の気持ちが大事 高杉 響平

 死刑制度について学んで、最初は制度の存置に賛成だったけど、反対を主張する人たちの意見や経験を知ると、どちらが正しいのか迷ってしまいました。

 だけど、ぼくはやはり死刑制度の存置に賛成したいと思います。加害者は死刑判決が出る可能性があることを分かって罪を犯しているはずで、裁判で被害者の遺族の気持ちより加害者の生きる権利を大切にするのは違うかなと思いました。自分の家族や大切な人が殺されて加害者が生きていたら、遺族は当然死刑を望むと思います。

 授業を通して学ぶ中で、公正な裁判がなされていないこともあるということが分かりました。検察側が自分たちの不利になるような証拠は隠し、有利になるものだけを裁判所に提出して、これで判決が言い渡されるということも納得できませんでした。

 裁判員制度でぼくたちも数年後には裁判に参加するかもしれないし、死刑判決を出すこともあり得るので、もし自分がなったら責任をもって担当したいです。


許されぬ加害者の罪 村田 海斗

 ぼくは授業の最初の頃は死刑制度の存置に反対でした。確かに加害者は悪いことをしたので、それなりの罰を与えるのはいいと思いますが、もしその死刑囚がえん罪だったとすると、取り返しがつかないことになってしまいます。

 しかし、次の授業で存置に賛成の人たちの意見や体験をじっくり聞いてからは、存置に賛成したいと思うようになりました。もし自分の家族が犯罪の被害に遭ったら当然加害者を許せないし、復讐(ふくしゅう)したいと思うからです。

 加害者の中には確かに罪を悔い改めて更生する人もいるかもしれませんが、罪を犯したことには変わりありません。加害者の犯罪を決して許してはいけないと思いました。死刑判決を受けた死刑囚たちは、自分のしたことを拘置所内で深く反省してほしいと思います。

 死刑制度の学習はとても難しくて悩みました。これが正しい、ということはないと思うので、これから先も死刑制度について考えていきたいです。


裁判員制度も理解を 常永敬太郎

 死刑制度の存置について言えば、ぼくはどちらかというと賛成寄りの意見です。

 もし加害者がえん罪だった場合、死刑を執行されてしまったら取り返しのつかないことになります。ただ、被害者側の立場から考えると、「悔しい」とか、「死刑にしてほしい」とか、いろいろな感情があると思います。

 もしぼくの家族が殺人事件に巻き込まれた場合、ぼくも「加害者には罪を償ってほしい」と考えるはずです。だから、どちらかというと死刑制度の存置に賛成したいです。

 日本には2009年にスタートした「裁判員制度」という制度があります。これは市民が裁判員に選ばれて、刑事裁判の第一審を担当する制度です。一般の市民が被告人の罪について考えることはとても大変なことだと思います。

 国民なら誰でも裁判員に選ばれる可能性があります。死刑制度の存置、廃止の問題とともに、裁判員制度についても深く理解していきたいです。


終身刑をつくったら 橋本真奈美

 私は死刑制度の存置に賛成する気持ちが7割ぐらい、反対する気持ちが3割ぐらいと、すごく迷っています。

 もし死刑制度がなくなったら、被害者やその遺族は加害者のことが絶対に許せないと思うし、私だったら死刑にしてほしいと思ってしまうはずです。でも、授業の中では、えん罪だった場合には取り返しのつかないことになることも学びました。世界も廃止の流れだし、外国のように日本にも終身刑をつくったらいいとも思いました。

 ただ、光市母子殺害事件の被害者遺族である本村洋さんのエピソードを聞いたら、やっぱり死刑制度は必要だと思いました。私はそういう犯罪の被害に遭ったことはないけど、すごく共感を抱きました。

 被害者の遺族には当然加害者への恨みはあるだろうし、マスコミによる報道被害や精神的苦痛もあり、死刑制度があることでそれらが軽減される人もいるのではないでしょうか。だから私は死刑制度の存置に7割賛成です。


国が命奪うのは残酷 中島 颯太

 社会科の時間に死刑制度について考えました。制度を存置したい立場の人たちの意見を聞いて、納得する部分はありましたが、ぼくは存置には反対したいです。

 死刑を執行することで遺族の感情が満たされたり、経済的な負担が削減できたりといったメリットはあるけど、死刑を執行したからといって事件は解決しないし、やはり非人道的な刑罰だと思います。

 存置することでえん罪が起こりうる危険性もあるし、死刑囚にも生きる権利はあると思うので、人権を侵害していると思います。先進国をはじめとする世界の国々は死刑を廃止する傾向があるし、死刑があっても犯罪の抑止効果はないという研究結果も出ています。いくら凶悪な事件を犯しても1人の人間なので、その命を国家が奪ってしまうのは残酷すぎると思います。

 死刑制度の存置にはもちろんメリットもありますが、その半面でデメリットもあるので、ぼくは死刑制度は廃止すべきだと思います。


存廃の間で心揺れる 佐々木悠策

 死刑制度の廃止と存置についてそれぞれの意見を聞きました。廃止したい人たちの中では、死刑廃止を推進する議員連盟の元会長だった亀井静香さんの意見がとても印象に残っています。

 死刑は国家による殺人ではないか、えん罪の危険性があるのではないかなど、自分が考えていなかったことをたくさん知ることができました。また、亀井さんが終身刑の導入を目指していることを聞いて、共感する部分が少しありました。

 一方、存置したい人たちの意見では、光市母子殺害事件の遺族である本村洋さんがとても印象に残っています。ぼくも被害者側の立場から考えると死刑は存置した方がいいと思っていたので、少し考え方が似ているのかなと思いました。

 授業後の考えは、死刑は存置した方がいいと思っていた授業前と少し変わりました。授業後も存置した方がいいと思いましたが、少し微妙な感じになりました。いろいろな側面から考えると、簡単に言い切ることはできないと思いました。


一生かけて償うべき 宮藤 宥也

 死刑制度について学んで、ぼくはどちらかというと存置に反対したいと思います。

 存置を主張する人たちの意見も聞いて、被害者の感情や経済的負担の大きさについて知りました。本村洋さんが体験した光市母子殺害事件について聞いて、その気持ちを知りました。死刑制度がないと被害者はやりきれぬ気持ちになると思うから、存置したい人たちの意見も理解できます。

 しかし、自白を強要するような取り調べやえん罪があったことも学びました。授業の前までは、死刑制度が犯罪抑止力になっていると思っていたけど、国際NGOのアムネスティ・インターナショナルの資料を見ると、効果がないことも分かりました。死刑の執行が国家による殺人になることや、生きる権利を侵害するという話も聞いて、確かにそう思いました。

 もし死刑制度を廃止するとしたら、終身刑を創設したらいいと思います。死ぬことで罪を償うより、一生という長い時間をかけて償う方が罪の重さが分かるはずです。


簡単に結論出せない 渡邊凜乃亜

 授業のはじめには死刑制度の存置に賛成でした。もし家族が殺されたら、その加害者は死刑になってほしいと思うはずだからです。仮に終身刑があったとしても、加害者は生きていけるだけでも幸せだと思いました。

 しかし、世界が死刑制度廃止の動きに向かっていると知って、自分の考えはおかしいのかなと思いました。刑場の映像を見たら、死刑囚は怖いだろうな、というような同情心のようなものもなぜか湧いてきました。だから、今は自分の気持ちが少し揺らいでいます。

 でも、私は家族が殺されたことがないので、遺族の感情が分からないだけだと思います。殺された人や遺族の気持ちを考えると、怖かっただろうし、つらかっただろうと思います。だから、人を殺した加害者が生きているのはおかしいとも思うし、加害者の生きる権利と言われてもよく理解できません。

 まだまだ死刑制度のことについて知らないことが多いので、結論を出すことはなかなか難しいです。


存廃どちらにも一理 栗栖 健吾

 死刑制度について、存置と廃止を主張するそれぞれの意見を聞きました。授業の最初の頃は存置した方がいいと考えていましたが、今はどちらがいいのか、自分の考えを簡単に出すことができません。

 廃止したいという意見では、加害者の生きる権利を侵害することやえん罪の危険性もあり、人権を大事にしているのだと思いました。死刑制度が犯罪の抑止策になるのではないかと思っていましたが、研究ではそれほど効果がないとのことでした。

 一方、死刑制度は存置した方がいいという人たちの意見を聞いて、被害者や遺族の精神的な苦痛、感情を踏まえた時、存置は仕方ないことだとも思いました。光市母子殺害事件についても学びましたが、残された遺族の本村洋さんの姿を見ると、加害者への怒りがとても大きいことが分かりました。

 死刑制度を存置するのか廃止するのかはとても難しい問題ですが、これからもしっかり考えていきたいと思います。


えん罪考えると複雑 岩本 香蓮

 私は死刑制度の存置について賛成したらいいのか、反対したらいいのか、今はとても迷っています。

 被害者の遺族にとっては死刑があった方がいいと思うけれど、もし加害者の死刑を執行してしまってから、実はえん罪で本当の犯人ではなかったと分かった場合、取り返しがつかないことになります。

 自分の家族が殺されたりしたら当然死刑があった方がいいと思うけど、逆に自分の家族がえん罪にされて死刑になってしまったらと考えると、死刑制度はなくなってほしいとも思いました。

 テレビなどで死刑判決についてのニュースを聞いても、今までは殺人を犯した加害者は死刑になって当たり前だと思っていました。しかし、今回の授業で過去には死刑判決を出されたえん罪事件があったことを知り、複雑な気持ちになりました。

 今は自分の中でどちらとも言えないという状況なので、もっとこの制度について自分で調べて、学んでいきたいと思いました。

2021年2月23日 無断転載禁止

こども新聞