100年前の長浜人形を修復してよみがえらせた(左から)安東三郎さんと田中俊〓(左が「目」、右が「希」)さん=江津市和木町、安東さんの工房
100年前の長浜人形を修復してよみがえらせた(左から)安東三郎さんと田中俊〓(左が「目」、右が「希」)さん=江津市和木町、安東さんの工房

 約100年前から浜田市内の神社に伝わる長浜人形2体が、江津市に住む超一級のベテラン職人2人の手で修復され、よみがえった。江戸時代から島根県西部に伝わる長浜人形の中でも希少な品で、2人は、石見地方で育まれた文化の深みにあらためて感じ入る。

 安東三郎さん(93)=江津市和木町=と、田中俊〓(左が「目」、右が「希」)さん(79)=同市嘉久志町。安東さんは、20代の頃から長浜人形を作り続ける第一人者で、県伝統工芸士の称号も得た。田中さんは、象牙などに彫刻を施した装飾品・石見根付の作家で「日本の象牙彫刻展」最高賞の受賞歴もある。同じ江津の職人として半世紀近い交流があり、合作が実現した。

 修復したのは、仁和山八幡宮(浜田市弥栄町野坂)にある「随身像」と呼ばれる2体で、大きさはともに縦横100センチ、奥行き60センチ。腕利き職人が1929(昭和4)年に完成させ、神社にまつられてきた。経年劣化で色落ちや虫食い、破損が目立ち、気に病んだ氏子が修復を頼んだ。

 長浜人形は型抜きした粘土を高温で焼き上げ、着色して仕上げる。2人は、古い文献を参考に、衣装の色合いや弓矢などの持ち物を研究。お湯で色を落とし、破損箇所には漆喰(しっくい)を詰め、昔と同じ岩絵の具を表面に塗って完成させた。

 八幡宮でこのほど奉納式があり、鮮やかな色合いになった人形が安置された。安東さんは「たいへん貴重なものを預かり、懸命に修復した。その過程では、石見の文化の深みも感じた」と話した。修復を依頼した氏子代表の串崎文平さん(84)=浜田市弥栄町野坂=は「確かな技術で直してもらい、たいへん感謝している」と喜びひとしおだった。
      (福新大雄)