看板商品のマフィンが並ぶショーケース=出雲市西平田町、おやつ工房Lukka
看板商品のマフィンが並ぶショーケース=出雲市西平田町、おやつ工房Lukka

 素材にこだわった「心身にやさしいもの」を提供する店を新人記者2人が紹介する「はるかほのやさしいお店巡り」。第5回は焼き菓子販売「おやつ工房Lukka」を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)

▷木工品やドライフラワーを用いたナチュラルな売り場
 店主の上代奈穂美(なおみ)さん(45)が月に2回、出雲市西平田町の自宅玄関で焼き菓子を販売するほか、灘分町の工房での販売やイベント出店もしている。販売日程はインスタグラムで確認できる。

 子どもの頃から菓子作りが好きだった上代さんは、20代の頃からイベントに自作の菓子を出品していた。今年5月、出雲市灘分町で工房を立ち上げて本格的に焼き菓子販売を開始し、10月からは西平田町の自宅での販売も始めた。

 自宅での販売日は玄関にショーケースを設置し、焼き菓子約15種類を並べる。ドアを開けると、木枠のガラスケースとテーブルに、マフィンやクッキーがかわいらしく並んでいた。ケースの横や壁にはドライフラワーが飾られ、ナチュラルで落ち着いた雰囲気に気分が安らぐ。

 

▷季節を感じられるマフィン
 看板商品はマフィン(各320円)。ボリューム感があるキノコのようなシルエットで、旬の果物を用いて季節を感じられるのが特徴だ。現在はリンゴ(紅玉)、洋梨、イチジクなどのマフィンを用意し、ほっこりとした味に冬の訪れを感じる。

 さまざまな焼き菓子を作る中で、マフィンはアレンジの幅が広く、季節の果物を取り入れやすいと気づいた。「“季節を感じられるお菓子”をテーマにしたかったため、自然とマフィンが看板メニューになりました」。秋冬はリンゴやイチジク、イチゴなどを取り入れる。春夏はブルーベリーなど季節の果物を用いるほか、「冷やしマフィン」と称した冷たいマフィンで涼しさを提供する。

木工品を手掛ける知人に作ってもらったショーケースに、マフィンがかわいらしく並ぶ。

 食べ心地の良さにもこだわり、パサパサと乾燥した食感にならないよう試行錯誤したという。「知人に正直な意見をもらいながら、水分量を調節したり、小麦粉の種類や量を調節したりしました」。

 ほかにも、バターの代わりに植物性油を使い、冷やした際のパサパサ感を軽減するなど工夫する。上代さんは「“マフィンといえばLukka“と言ってもらえるようになりたいです」と力を込めた。

 ショーケースにはマフィンのほかにもパウンドケーキ(250円)やクッキー(220円)、ビスコッティ(150円)が並ぶ。「オレンジとピスタチオのビスコッティ」(150円)を食べてみた。オレンジの爽やかな酸味とピスタチオの香ばしさがよく合っている。サクッと口当たりのよい食感がありつつ、パサパサ感がないのがうれしい。上代さんは「親が子どもに安心して食べさせられるお菓子を作りたくて」と話し、素材の味を生かした優しい甘さにもうなずける。

マフィン以外にも、クッキーやパウンドケーキなどを販売する。手前が「オレンジとピスタチオのビスコッティ」

▷公務員として20年間勤務
 上代さんは今年3月まで、栄養士として市役所に勤務していた。保育園での献立作りや市民を対象とした料理教室、栄養指導を経験する中で「菓子作り教室をしたい」という気持ちが芽生えた。しかし、新型コロナが流行する中で教室を開くのは難しいと考え、販売することにした。長女の誕生を機に働き方を見つめ直していたこともあり、20年間勤めた市役所を退職して菓子販売の準備を始めた。

 当初は不安が大きく、「製菓のプロでもない主婦が、趣味で作っている菓子を買ってくれる人がいるのだろうか」と悩み、試作を繰り返す日々が続いた。上代さんは「知人や家族に試食してもらって、作り直して…ひたすら試作を繰り返していました」と当時を振り返り、笑顔を見せる。

 不安を抱えながらのスタートだったが、SNSでの反応や客の声が背中を押した。上代さんは「繰り返し購入してくれる人や、おいしかったですと感想をくれる人がいて、とても励みになりました」と、購入してくれる人とのつながりに感謝する。

店主の上代奈穂美さん(45)

 今後については「まだ始めたばかりで慌ただしいですが、販売日を増やしたり売り場を整えたりと、お客さんが商品を買いやすい状態を作っていきたいです」と語った。また、地元・平田が好きだといい「ここ数年で新オープンの店が増え、平田が盛り上がってきていると感じます。私も微力ながら、地元の活性化に一役買えたら」と意気込みを見せた。控えめな印象ながらも、お菓子作りに妥協しない一面や地域貢献への強い意欲をもつたくましい一面が垣間見えた。

 記者は高校時代を平田で過ごしたが、当時と比べると確かに、こぢんまりとしたおしゃれな店が増えたように感じる。元栄養士・上代さんが作る「安心して食べられるお菓子」が並ぶ住宅街の一角。おやつ工房Lukkaの今後と平田の活性化、両方が楽しみだ。