秋の中国大会も終わり、肌寒さも感じられるようになった11月初旬、島根県の高校1年生チームの頂点を決める熱戦が繰り広げられた。1年生にとっては貴重な公式戦。各校の新戦力を把握し、来年そして再来年の大会を展望するうえで重要な資料となる。「コータの野球ざんまい」第12回は、決勝トーナメントを取材したスポーツライターの井上幸太氏が、注目したチームや選手をレポートする。

2年後の主役は?

 11月7日、令和3年度島根県高等学校野球1年生大会の決勝トーナメントが開催された。松江、出雲、石見の3地区に分かれて予選が実施され、各地区の優勝校と前回大会優勝地区の準優勝校の計4校が集い、準決勝、決勝相当の計3試合が行われる大会形式だ。

 松江地区からは開星、出雲地区は出雲農林、大東、飯南の三校連合チーム、前回大会で益田東Aが優勝したため、2校が出場できる石見地区からは矢上Aと大田が、決勝トーナメントに駒を進めた。

 昨年は新型コロナウイルス感染防止の観点から、3地区決勝トーナメントは中止、地区予選のみの実施だった。2年ぶりに開催された、2年後の主役を占う試金石となる大会を振り返る。

<決勝トーナメント結果>(※一部公式記録と異なる場合があります)
▼準決勝 第1試合
矢上A 4×―3 三校連合

三校連合 000 000 111|3
矢上A      000 010 102×|4
(9回サヨナラ)
【三】飯塚(出)、原竜(大)―川島(飯)
【矢】中村―寺本
  本:
  二:原竜(三、大)
※三校連合は出雲農林、大東、飯南の連合。三校連合の選手の末の括弧書きは所属高校

▼準決勝 第2試合
開星9―6大田

大田:110 300 001|6
開星:001 043 10×|9
【大】山尾、持田―今崎
【開】赤名、上村―菅田、和田
本:
三:
二:菅田、前井出、宮本、川口(開)

▼決勝
開星11―3矢上A

開 星:600 221 0|11
矢上A :200 000 1|3
(規定により7回コールド)
【開】山本―和田
【矢】橋川、隅田、日野―寺本
本:
三: 松浦(開)、細川(矢)
二:宮本2(開)、中村、中根(矢)
 

 大会を制したのは松江地区代表の開星だった。名物監督として名を馳せた野々村直通(69)が2020年春に電撃復帰して以降では、初めて指揮官が選手獲得に携わった世代で、今春の島根大会で早々に4番に座った前井出侑哉ら、好選手が多く集まったと評判だった。

 優勝の結果だけを見ると、順当な結果のように思えるが、準決勝の大田戦では序盤に4点ビハインドを背負うなど、苦しい展開を強いられた場面も。だが、4点を追う5回に、パンチ力と走守のスピード感が光る1番・川口刃が左前打で先陣を切り、4安打に2失策を絡めて逆転に成功した。

 続く5回には、3番・前井出への申告敬遠を含む3四球で得た走者を、5番に座る右の長距離砲・山本芭月、試合途中からマスクを被った6番・和田流汰の連打で返し、試合の主導権を握り返した。

 7回にも川口の左中間突破の適時二塁打で1点、9回に1点を失ったものの、9-6で押し切った。

 4失策を喫するなど、試合が落ち着かなかった要因は試合の入り方にあったと、部長の大谷弘一郎(39)と、今大会は監督代行として采配を振ったコーチの野津風馬(31)が分析。そこで、準決勝と決勝のインターバルを利用して、一からアップをやる直すなど、もう一度気持ちと体を作り直し、決勝へと臨んだ。

次期エース候補が完投

 首脳陣の判断が功を奏し、決勝では初回から打線が爆発。4番に座る左のスラッガー・松浦太琥の中越え2点適時三塁打など、5安打を集めての打者一巡の猛攻で6点を先取した。その後も4回に7番・大西凰真の2点適時打、5回にも3番・前井出が中前に2点適時打を放つなど着実に加点。6回には3四死球で満塁の好機を作り、1番・川口の右犠飛でダメ押しの1点を奪った。

 決勝の先発は山本。立ち上がりを攻められ2点を失ったものの、2回から5回までは、1人の走者も許さない安定感のある投球を披露した。6回は2死からの連打で得点圏に走者を背負ったものの、後続を打ち取り無失点。やや疲労の色が見えた7回は、長打で失点を許したものの、1点で止め、11-3でコールド成立(1年生大会は決勝もコールド採用)。優勝を果たした。

決勝で完投した開星の山本

 完投した山本は、ホッとした表情を浮かべながら、自身の投球を振り返った。

 「1年生大会の前に、顎にボールが当たってケガをしてしまって。準決勝、決勝がぶっつけ本番な面もあったんですが(松江地区予選は欠場)、無四球で完投できてよかったです」

 実兄は20年のドラフトでロッテに育成指名された開星OBの大斗。当初は兄と違うチームで甲子園を目指そうとも考えたというが、開星を見学に訪れた際、「練習の雰囲気がすごくよかった」と、兄と同じ道に進路変更した。下級生時代から中軸を任された兄同様、右の強打者としても期待され、本人は「両方頑張りたい。投手としては自分たちの代からではなく、少しでも早く背番号1を取りたい」。“二刀流”に意欲を燃やす。

 余談だが、今大会の背番号は24。ポジションではなく、50音順で背番号を割り当てたことでの偶然だが、兄がプロで背負う「124」を彷彿させる形となった。

 現時点での県の頂点に立ったが、優勝の瞬間も選手たちは派手に喜びを表さなかった。完投した山本を筆頭に、引き締めた表情を緩めることなく、整列へと向かっていった。

優勝した開星ナイン

大会前、監督の言葉

 先述の通り、今大会は指揮官の野々村がベンチ入りせず。部長、コーチに指揮を委ねる形となったが、大会前、このように選手たちを送り出していた。

 「1年生大会は...