夏の甲子園に出場した島根勢のうち、過去10年で公立校の出場は2016年の出雲のみ。練習環境が整い、県境を越えて有力選手が集まる私学勢が台頭し、公立校が苦戦を強いられる現状は全国に共通する。そんな中、名だたる強豪私学が集う兵庫県において、公立校を3度にわたり甲子園に導いた名将が島根県を訪れ、講習会を開いた。名将は何を教え、地元指導者は何を学んだのか。「コータの野球ざんまい第15回」は、講習会を取材したスポーツライターの井上幸太氏がレポートする。

「福村野球道場」に若手指導者ら次々

 2月27日、平田高校(出雲市平田町)のグラウンドで、2021年春の選抜高校野球に出場した東播磨(兵庫)を率いる福村順一監督(50)による指導者講習会が行われた。かねてから福村監督と交流があり、前任の出雲と合わせて監督として2度の甲子園出場を果たした平田の植田悟監督(50)が企画し「福村野球道場」と銘打ち開催。加古川北を2008年夏、11年春の2度、母校の東播磨でも21世紀枠で甲子園出場に導いた福村監督の指導理論を学ぼうと、県内公立高校の20、30代の指導者を中心に約25名が参加した。

東播磨の福村順一監督

 講習会のメインとなったのが、福村監督が戦略の根幹に据えている走塁について。午前中は平田の野球部員たちがモデル役を務め、数種類のスライディング、各塁状況でのリードの取り方、走者としての心構えなどを、実演を織り交ぜながら福村氏が熱く説明した。

スライディング練習の様子
スライディング練習の様子

 自チームでの指導に生かそうと積極的に質問し、スマートフォンやタブレットなどで指導の模様を撮影する熱心な参加者の姿が印象的だった。

タブレットなどで指導風景を撮影する参加者

激闘の秘話

 午後からは、校地内にある同窓会館「プラタナス記念館」に場所を移し、座学での走塁、戦術の勉強会が実施された。

座学で自らの経験を話す福村監督

 座学の主題となったのが、福村氏の3度目の甲子園出場となった、昨春のセンバツ初戦の明豊(大分)戦の振り返りだった。明豊はこの大会で準優勝した強豪。東播磨は延長11回の接戦の末、9-10のサヨナラで敗れた。

2021年春、明豊と接戦を演じた東播磨(共同)

 采配を解説した後は、質疑応答へと移った。

 若手指導者陣から日々の指導に関する質問が出た後、主催者である植田監督から「この試合、何対何で勝つつもりでしたか?」とゲームプランへの質問が飛び出した。鋭い質問に福村監督は...