冬の練習の成果を確かめ、甲子園を懸けた夏の戦いの試金石になる春の島根県大会。今年は5月1日に決勝があり、頂点に立ったのは、昨春、そして昨秋の両大会を制した立正大淞南だった。「コータの野球ざんまい」第16回は、大会を振り返り、一冬を越えた各チームの戦力や夏への展望をスポーツライターの井上幸太氏がレポートする。

「激戦ゾーン」勝ち抜く
 例年、1、2回戦相当の東部、中部、西部予選が終了した後、3回戦以降に相当する県大会の組み合わせを再抽選していたが、今年度から地区予選の組み合わせ決定と同時に、勝ち上がったチームが、県大会のトーナメント表のどの位置に入るか決まる方式に変更された。

春季県大会の地区予選結果
春季島根県大会の結果

 抽選の結果、立正大淞南は初戦の松江東に勝ち予選を通過すると、次戦の相手は、昨夏準Vの大社、昨夏8強の三刀屋、昨春準Vの出雲西の3校がひしめくブロックの勝者と決まった。組み合わせ抽選直後から、県内各校や県高野連関係者からは「今大会随一の激戦ゾーン」との声が囁かれた。

 その前評判通り、立正大淞南は一筋縄ではいかない戦いが続いた。松江東戦こそ13安打10得点の5回コールドで快勝したものの、県大会初戦(3回戦)の大社戦は1,2回に失点を許し、ビハインドのまま中盤を迎える苦しい展開になった。

 反撃に転じたのは5回。8番・引野龍心、2番・田中康生のソロ本塁打が飛び出し同点、続く6回にも2安打に足技を絡めて2点を追加。逆転に成功した。

 だが、先発した2年生右腕の山下羅馬からバトンを受けた持田翔秀が、登板直後の7回に大社の右の大砲・岡本倫朋に左越えのソロ本塁打を浴び、1点差に詰め寄られた。

 4-3のまま迎えた9回は、この回から登板の3年生右腕・古川魁人が得点圏に走者を許すも、後続を打ち取り、無失点で逃げ切った。

 連戦となった安来との準々決勝は、3回に4安打を集めて3点を先制するなど、序盤から主導権を握り、4-1で9回へ。持田、左腕の小坂純輝に続き、前日に続いて古川がクローザーとしてマウンドに立った。

 だが、連打と死球で無死満塁のピンチを招き、安来の2番・平井慶彦の中前打で失点。1死も奪えず前日先発の山下にマウンドを譲った。

 山下は登板直後に犠牲フライで1点差に詰め寄られたものの、最後は空振り三振で2死満塁のピンチを切り抜け、火消しに成功。2日連続の1点差での辛勝に太田充監督(49)は「昨日は2年生の山下で勝った試合。だからこそ、今日は3年生(の投手陣)で勝ち切りたかった」。昨夏の3回戦で敗れた因縁の相手に雪辱を果たすも、厳しい表情で試合を振り返った。

 準決勝では、秋も準決勝で顔を合わせた益田東と再戦。

 2点を返された直後の8回に、秋の同カードでも一発を放った福島迅が3ラン本塁打をたたき込むなど、先制、中押し、ダメ押しの得点を重ねる理想的な試合運びで、8-2で退けた。

決勝で好投した立正大淞南の井上雄輝

 石見智翠館との決勝には、準決勝に続いて最速140キロ右腕の井上雄輝が先発。強打線相手にもひるまず、130キロ台中盤の力のある直球で攻め、7回まで散発3安打の無失点。8回にこの試合初めての連打を浴びて失点したが、最後まで球威と集中力を絶やさず、1失点完投で秋に続く優勝投手となった。

「嬉しいです」

 秋は四死球でリズムを乱し、そこから立ち直れない“脆さ”を孕んでいたが、この試合は9回で3四球と安定。四球直後の打者はすべて打ち取るなど、自分との戦いではなく、打者と向き合えている姿が印象的だった。

背番号16で春の大会に臨んだ井上

 秋は県大会、中国大会ともエースナンバーを背負ったが、今大会は「ショートの控えも兼ねて」(太田監督)の背番号16。夏に向け、持田、小坂、春に台頭した山下らとの競争に勝ち、再び「1」を背負えるか。

 この試合で攻撃の核となったのが、4番の清水タデウ健次。2回に左翼線に二塁打を放ち、先制のホームを踏むと、5回の1死一、三塁の好機でも二塁打。2長打を含む3出塁の活躍で、準決勝、決勝で4番に抜擢した指揮官の期待に応えた。

決勝で4番に座り、活躍した立正大淞南の清水タデウ健次

 「頑張ってきた選手が立つべきところ」という太田監督の計らいで、...