島根県の野球ファンの中で今密かに、広島六大学野球が熱い。県内の高校を卒業した選手が有力校主力として活躍。あの日本を代表するスラッガーの記録を抜いた逸材もいる。「コータの野球ざんまい」第17回は、スポーツライターの井上幸太氏がリーグ優勝のかかった一戦を取材し、ゆかりの選手の活躍にスポットを当ててリポートする。

近大工学部の主将

 5月14日、広島六大学野球連盟の春季リーグ戦の第5週が行われた。この日の第2試合、近大工学部と広島経済大の試合は、リーグ優勝がかかった大一番だった。

 8日のリーグ第4週を終えた時点で、近大工学部が6勝0敗の勝ち点3で首位、広島経済大が5勝2敗の勝ち点2で2位。第5週の直接対決で近大工学部が1勝を挙げれば、その時点で優勝決定、広島経済大も土日で2連勝すれば逆転優勝できるという“天王山”となった。

 対決する両校には、島根県の高校球児だった選手が多数在籍。試合は近大工学部の速攻で幕を開けた。いきなり先頭打者弾が飛び出し、勢い付く中、無死一塁で、近大工学部の主将の4年生・杉本涼が打席に入った。

近大工学部の主将を務める杉本涼 

 杉本は開星の出身。高校時代は下級生時代から遊撃手のレギュラーを掴み、2年だった2017年夏の甲子園に出場している。2年秋は一学年後輩の田部隼人(現・DeNA)の育成のため、三塁にコンバートされ、遊撃手の田部と三遊間を組んだ。田部はプロ入り前、「守備の考え方や基本の多くを杉本さんから教わった」と語るなど、後輩の成長にも一役買っていた。

開星時代の杉本

 3年春からは再び遊撃に戻り、近大工学部では入学直後から遊撃のレギュラーを奪取。1年春の全日本大学選手権に出場し、1回戦の東農大北海道オホーツク戦で大会通算800号のメモリアルアーチを放った。

柳田の記録を塗り替える

 杉本が2球目を強振すると、打球を広島経済大の4年生で右翼手の山根良太ががっちりキャッチ。山根も開星出身で、杉本とは同級生になる。杉本とともに下級生時代からベンチ入りし、2年夏の甲子園の花咲徳栄戦では守備から途中出場。最終回に打席にも立っている。

広島経済大の山根良太

 2年秋から主将を務め、2017年秋の島根大会で優勝。3年春からは中学時代以来の捕手に転向し、チームを支えた。

 大学進学後は、打撃を生かすために外野手に再転向。昨年から長打力が本格開花し、昨春のリーグ戦では3打席連続本塁打を記録するなど、チームの優勝に貢献。同秋も本塁打を積み上げ、広島経済大の先輩にあたる“ギータ”こと柳田悠岐(ソフトバンク)が4年間で放ったリーグ通算8本塁打にあと1本と迫って今春を迎えていた。

開星時代の山根。3年時は捕手も務めた

 そして、今春の開幕週である4月2日の広島工業大戦で一発を放ち、柳田の記録に並ぶと、同月9日の広島大戦で9号をたたき込んだ。

 名実ともリーグを代表するスラッガーとなったこともあり、...