「美しいってなんだろう?」。娘がふと父に尋ねる。父が思い浮かべるのは、誰もが納得する「絶対的な美」ではなく、かつて暮らしたインドの「なんてことのない日常のワンシーンばかり」。

 落書きの文字、かみたばこで赤く染まった壁、ココナツ売りの見事なナタさばき、路上に満ちる音の数々。それらは「ときにはみにくく、ざんこく」で「とりとめがなく、たよりなくもある」。

 そして娘に聞き返す。「あなたはどうおもう?」

 父がこれまで出会ってきた「美しい」光景をテーマごとにつづり、...