夏の高校野球島根大会が7月13日、開幕した。今年で104回を数える大会では、幾多の名勝負が繰り広げられてきた。コータの野球ざんまい第21回では、スポーツライターの井上幸太氏が印象深かった一戦を掘り下げていく。

15年前の忘れえぬ光景

 15年前、夏の島根大会序盤に球場で出くわした光景が今も脳裏に焼き付いている。

 いかにも高校野球通な男性が、その年の県内の有力校、勢力図を熱っぽく語り、最後にこう締めた。

 「今年の島根で、甲子園のマウンドが一番似合うのは入江だよ」

 2007年夏、県内で圧倒的な存在感を放っていたのが、浜田のエース・入江慶亮だった。身長は170センチ代半ばと、目を引く体躯ではなかったものの、股関節を柔らかく使った重心移動が生み出すボールの伸びは出色。春の島根大会では、35回を投げ、37奪三振を積み上げた。

2007年、浜田のエースとして夏の大会で活躍した入江慶亮

 春夏15度の甲子園出場を誇る名門の背番号1を担う左腕は、“和田毅(ソフトバンク)2世”とも称された。

 秋優勝、春の大会では決勝で江の川(現・石見智翠館)に敗れて準優勝だったものの、地元開催の中国大会で決勝進出。決勝では前年秋の中国王者で、野村祐輔(広島)、小林誠司(巨人)のバッテリーを擁した広陵に善戦。練習試合では、夏の甲子園の決勝で広陵を下すこととなる佐賀北からも勝ち星を挙げていた。チームを率いた佐々木義彦監督は、当時のチームをこう評する。

 「自分は甲子園で何勝もしてきた監督ではないから、断言はできません。けれど、自分たちの野球ができれば全国で戦えるチームだと思っていました」

2007年春の中国大会で、同年夏に甲子園で準優勝する広陵に1-4で敗れたものの、接戦を繰り広げた浜田

 04年以来、3年ぶりの甲子園出場に向け、視界は開けていた。

 その年のシード校は、秋優勝、春準優勝の浜田が夏の第1シード。春Vの江の川、秋4位、春3位と2季連続で上位進出した松江農林が続き、秋準優勝、春8強の開星が第4シードにすべり込んだ。

「挑戦者」への変貌

 開星は前年夏の優勝校だったが、春の準々決勝で浜田に1対6で敗戦。入江に1失点完投を許す完敗だった。

 2年生からエースナンバーを背負った好右腕の吉田悟が残っていたものの、梶谷隆幸(巨人)、主将の太田翔平ら分厚い戦力を擁した前年と比べ、野手が小粒との見立てもあり、2強と目された浜田、江の川を追う存在に位置づけられていた。

 当時の開星の主将だった竹下伸也が言う。
 

当時開星の主将だった竹下伸也。出雲西の部長を経て、今春から母校のコーチとなった

 「春の大会に入るまでは、『絶対オレたち強いだろ』と正直思っていました。秋の決勝でも浜田に負けていたんですけど(4対7)、こっちはエースの吉田が投げていなかったし、...