「年を取って介護が必要な状態になっても自宅で暮らしたい」と思った場合、頼りになるのが介護保険の訪問介護だ。ヘルパーが家に来て、家事をしてくれたり食事や入浴の介助をしてくれたりする。地方の町村部でその大きな担い手になっているのが「社会福祉協議会」(社協)という公的な役割を持つ団体だ。ところが、ここ数年、全国各地でこの社協が訪問介護の事業をやめる例が相次いでいる。「ヘルパーをよこしてくれるところがないから、家で暮らせない」。そんな事態が静かに進んでいる。社協が訪問介護をやめた自治体を訪ね、背景や影響を取材した。(共同通信=市川亨)
▽全国津々浦々にある「社協」
「社協」と聞いてもピンとこない人も多いだろう。民間の介護・福祉サービスが多くある大都市圏では、存在感がそこまで強くないが、地方では住民生活に大きな役割を果たしている。
社会福祉法という法律に基づき設置されている団体で、47都道府県と1741市区町村全てにある。介護や障害福祉サービス、子育て支援のほか、赤い羽根で知られる共同募金運動への協力といった事業を実施している。
住民や企業から集めた会費、自治体からの事業委託費や補助金などで運営していて、災害時のボランティアセンター開設、生活困窮者らへの資金貸し付けも担う。
ざっくり言えば「全国津々浦々で困っている人を助けるセーフティーネット的な団体」ということになる。自治体から職員が出向したり、退職後に再就職したりするなど行政との結び付きも強い。
▽約220カ所が廃止や休止になっていた
多くの社協は介護保険事業もやっているのだが、近年、訪問介護をやめる例が続いている。都市部で一般の民間事業者との競合を理由に撤退するケースもあるが、多くはヘルパーの高齢化や人手不足、事業の収支悪化などが要因だ。
地方では高齢者の人口も減っているため、利用者が減少。訪問先への移動距離が長く、事業の効率化が難しいといった事情もある。「訪問介護は赤字」という社協は多い。
では、どのくらい...