「新幹線のお医者さん」に当たる東海道・山陽新幹線の検査用車両「ドクターイエロー」。走るダイヤを公開していないため、鉄道ファンでなくても見かけた人が「ラッキーだ」とスマートフォンやカメラで撮影することも多い「人気者」だ。だが、筆者は3つの理由から現行車両が2020年代後半に引退し、ドクターイエローはその活躍に幕を下ろすと予想している。
(共同通信=大塚圭一郎)
【ドクターイエロー】東京駅と博多駅(福岡市)を結ぶ東海道・山陽新幹線で使われている検査用車両で、高速で走りながら架線や線路、電気設備などの状態を調べている。関係筋によるとだいたい10日に1回の割合で東京―博多間を2日間で往復している。黄色い塗装が採用されたのは、もともと保守や工事に使う車両は営業用列車が走らない深夜に出動することが多いため、目立たせるために黄色く塗装する伝統が引き継がれたとされる。
▽700系がベース
東京駅と新大阪駅(大阪市)を結ぶ東海道新幹線が1964年に開業して以来、新幹線では60年近くにわたって鉄道会社側に責任のある乗車中の旅客死亡事故が起きていない。東海道・山陽新幹線で安全運行を支える“縁の下の力持ち”となっているのがドクターイエローだ。
現行車両は先頭がカモノハシのようになった700系がベースの923形で、1編成に7両を連結している。営業列車と同じように運転士と車掌が乗っているほか、線路と電気設備がそれぞれ専門の技術者も乗車している。もしも問題点があれば指令室に連絡して対応している。
東海道新幹線を運行するJR東海に所属するT4編成が2001年、山陽新幹線(新大阪―博多間)を担うJR西日本が持つT5編成が05年からそれぞれ使用。新幹線用車両は「高速運転で、走る距離も長いため在来線に比べて車体が劣化しやすい」(JR関係者)とされ、旅客用車両では300系が登場から20年後の2012年に引退している。
筆者は登場から22年余りがたつ現行車両923形が2020年代後半に全て引退し、費用がかさむ次期ドクターイエローは造らないと予想している。3つの理由を挙げたい。...