容疑者が立てこもった個室のイメージ
容疑者が立てこもった個室のイメージ
立てこもり事件の経過
立てこもり事件の経過
容疑者が立てこもった個室のイメージ 立てこもり事件の経過

 さいたま市のJR大宮駅前のインターネットカフェ立てこもり事件で、監禁容疑で逮捕された住所不定、無職の林一貴容疑者(40)が所持していたとみられる刃物が現場で見つかっていたことが19日、埼玉県警への取材で分かった。林容疑者は立てこもっている間、交渉役の捜査員に「ナイフを持っている」「近づくと一緒に死ぬ」などと人質の20代女性店員への危害を示唆。県警は、刃物で脅しながら監禁していた疑いもあるとみて調べる。

 県警によると、林容疑者が立てこもった個室ブースは、密室の防音構造で、主に備え付けのインターホンを使って交渉。林容疑者は「少し待って」「たばこを吸ったら出る」と時間を稼ぐような対応を繰り返す一方で、ナイフ所持を示唆し「近づいたらやるぞ」と捜査員の突入をけん制するような発言もしていた。

 ブースを開けられないよう扉の鍵に細工したとみられ、店のマスターキーでは解錠できない状態だった。県警は女性店員に危害が加えられないよう、インターホンで約30分~1時間おきに接触を繰り返した。

 18日午後8時ごろ容疑者は「もう寝る」と話して応答しなくなり、捜査員は寝静まったと判断。特殊工具で鍵を壊して突入し、容疑者を女性店員から離してブース外に引きずり出した。

 女性店員は疲労した様子だったが、保護した際の受け答えはしっかりしていたという。県警は19日に現場検証し、詳しい経緯や容疑者の目的の解明を急ぐ。

 

 

 交渉難航 緊迫の密室

 人質に「けがをさせる」と口走る男、現場に走る緊張―。さいたま市のインターネットカフェ立てこもり事件で、埼玉県警は監禁容疑で林一貴容疑者を逮捕するまでの32時間の経緯を説明。密室の相手に対する緊迫した交渉の状況が明らかになった。

 「従業員が客に呼ばれてブースに入り、応答がない」。県警に店からの一報があったのは、17日午後4時8分。容疑者は系列店で会員登録していたが、現場の店舗を利用するのは初めてだった。

 約15分後に警察官が駆け付けたが、7階の個室は重厚なドアで閉ざされ、上下に隙間もない。凶器の有無や、人質となった女性店員の安否も分からないまま、解放に向けた交渉は始まった。

 立てこもりや人質事件に対応する訓練を積んだ特殊部隊の捜査員が、個室に備え付けられたインターホンで呼び掛け、やりとりを続けたが、金銭や逃走車の要求もなく目的は判然としなかった。

 ナイフの所持を示唆して「近づくとやるぞ」と脅す容疑者。室内のパソコンではニュースも確認でき、報道内容を気にする様子も見られ、県警は細心の注意を払った。

 受話器を女性に渡させ、声を聞いて無事を確かめることもできたが、女性は容疑者を警戒してか、「はい」「いいえ」と簡単な受け答えだけ。容疑者からは「のどが渇いた」「腹が減った」と要求があり、飲料水や軽食を差し入れた。

 「出るので少し待ってくれ」「どのくらい待たせるの?」「30分」。定期的なやりとりで、じりじりとすぎる時間。容疑者は「捕まりたくない」と本音も漏らした。

 18日午後8時すぎ、容疑者の応答が途絶え、県警は寝入ったと判断。特殊工具で鍵を破壊し、特殊部隊がなだれ込んで一気に取り押さえたのは午後10時42分だった。警察当局幹部は「狭い密室の立てこもり事件はあまり前例がない。人質の安全を最優先にし容疑者を確保した。無事で何よりだった」と安堵(あんど)していた。