地域住民の懸け橋になった「にじいろ食堂」

甘みとコクのあるカレーライス、キャベツの酢の物、わらびの煮物…。老若男女の口に合うように味付けされた料理に、笑顔の輪が広がります。
出雲市万田町の西田コミュニティセンターで毎月開かれる「西田にじいろ食堂」には、地域の子どもたちからお年寄り、家族連れなど約90人が足を運びます。


運営スタッフで発起人の小林春美さん(72)=出雲市西郷町=は、給仕に、席の案内にと大忙しです。
この日は鶏肉が入ったカレー。日によっては、地元のジビエ肉を使用したカレーを提供することもあるのだとか。

小林さんは、コミセンがある西田地区で50年近く前に牧場を開き、酪農家になるという夢をかなえました。良い土地が見つかり、住民にも受け入れてもらえたことで、「地域に恩返しがしたい」という思いが強くなりました。
60歳までは「仕事、仕事の毎日」でしたが、跡取りができ、時間的な余裕も増え、6年前から地域の民生委員を引き受けています。
高齢者が集う「くにびき学園」で、子ども食堂について学びました。同じ出雲市内で食堂を開いている団体に話を聞きに行くと「たくさん申し込みがあって、さばききれない。小林さんの地元でもぜひ開いてほしい」とお願いされました。
さっそく民生委員の仲間に提案し、準備を進めました。子どもたちに安価で温かい食事を提供するのが子ども食堂ですが、地域の誰でも気軽に立ち寄れる場にしようと、たくさんの色が合わさった「にじいろ」を名前に付けました。
初めて開いた2024年8月には、スタッフを合わせて50人が食事をとりました。今では90人以上が参加します。地元の平田高校の生徒もボランティアとして加わり、食事ができるまでは子どもたちとゲームをして楽しみます。
会場の長机には、食事のプレートを受け取った様々な年代の人たちが集まってきます。「ここに座るだわね」「お元気でしたか」と温かい会話が飛び交います。「思い描いていたいい場所になってきてうれしいです」。
小林さんはこれからも、地域住民の絆をつなぐ懸け橋のような食堂になることを願っています。