絵本の魔法、教室に広がる 矢上の朝のひととき

「もったいないことしてないかい」。おばあさん役と子ども役の声色を使い分けながら、教室をぐるりと見渡すと、子どもたちは絵本にくぎ付けです。
邑南町矢上の白川富美子さん(72)は、1時間目が始まるまでの15分間の朝の時間を使って、月に2回、絵本の読み聞かせをしています。矢上小学校でのボランティア活動は、もう5年になります。
もともとは保育士として町内の保育施設で20年以上勤務していました。
保育士の先輩から「読み聞かせを手伝ってほしい」と誘われたことがボランティアのきっかけです。「他のことは無理でも、読み聞かせだったらできそう。孫に読むつもりでやってみよう」と思い立ちました。


「もう田植えは終わった?」と世間話に花が咲くこともしばしばです。

教室では、にこやかな顔で子どもたちに語り掛けるよう心がけています。絵本を手にすると、すっと背筋が伸び、自分自身も物語に入り込みます。
「読んでいる途中でざわざわしないかな」と、活動を始める前は不安でしたが、思った以上に子どもたちはしっかりと聞いてくれます。「読み聞かせのおばちゃんだ」と、町で声を掛けられることも増えました。
昔から「仕事だけだとつまらないから」と、婦人会や自治会の活動には積極的に参加してきました。
「人と人との関係が一番大事」だと、年齢を重ねて感じます。
読み聞かせでお気に入りの絵本は「もったいないばあさん」。「誰でも何か地域のためにできることはあるはず。それが自分の楽しみにもなります。
やらないとそれこそ『もったいない』ですよ」と、笑います。