動ける今を楽しむ 地域の集い

「足が動くうちは外に出ないとね」。
そう笑顔で語るのは、島根県奥出雲町に暮らす長谷川公子さん(82)です。
毎週火曜日の朝、公民館に集まる仲間たちと一緒に、セラバンド体操で体を動かしています。ゴムバンドを使ったこの体操は、筋力を落とさないための介護予防運動。
けれど、長谷川さんにとっては、ただの体操ではありません。


活動のきっかけは20年前、公民館長から「地域の高齢者のために、何か健康づくりを始めたい」と声をかけられたことでした。
保育士として働いていた経験と、スポーツ好きな性格もあり、「じゃあ、やってみようか」と軽い気持ちで始めたのが最初です。
当初は夜に開催していましたが、「女性の夜は忙しいのよ。ご飯作って、片付けて…」という声が続出。そこで昼間に変更したところ、参加者がどんどん増えていきました。

セラバンド体操では、ゴムの張力を利用して筋肉に負荷をかけます。ただ引っ張るだけではなく、戻る力を意識して使うことで、より効果的に筋力を鍛えることができます。
「今やってる動きは、足の筋力を鍛えるためよ」と、長谷川さんはポイントを丁寧に伝えながら、参加者と一緒に体を動かします。
保健師さんの講習を受けながら、専門的な知識も少しずつ身につけてきました。


「みんなで集まって、しゃべって、笑って。それが一番楽しいんですよ」。セラバンド体操をきっかけに、参加者同士で「生け花の会」も立ち上げました。
郵便局に作品を展示すると、「見たよ、よかったね」と声をかけられることも。名前を出すのは恥ずかしいという人もいましたが、「名前があるから、誰がやったか分かって、また話が広がるのよ」と、長谷川さんは積極的です。
取材の日は、活動の後、「生け花の会」メンバーと市内の飲食店でお疲れ様会を開きました。
「出られるときに出る。それが基本です。明日、足が痛くなるかもしれないし、誰かが具合悪くなるかもしれない。だから、元気なうちに出るんです」。
その言葉には、長年地域で活動してきた実感と、仲間への思いやりが込められています。
長谷川さんの活動は、健康づくりだけでなく、人と人とのつながりを育む場でもあります。公民館に響く笑い声と、花の香り。そこには、地域の元気の源がありました。