「元気かな?」のひと言がつなぐ、地域の安心
「元気かな?って、顔を見るだけでも違うんですよ」。そう語るのは、弥栄地区民生児童委員の大谷十三一さん(73)。
地域の高齢者宅を訪問し、安否確認や相談の窓口として活動を続けています。コロナ禍では電話での対応が中心でしたが、「やっぱり直接会って話す方が、相手の様子がよくわかる」と、今は再び訪問を重ねています。
活動を始めたのは12年前。前任者の高齢化に伴い、地域からの推薦を受けて引き継ぎました。
もともと地元出身で、Uターン後は土地改良区の職員として働いていた経験もあり、地域の人々の顔や暮らしをよく知っていることが強みです。「とみちゃん」と親しみを込めて呼ばれるその存在は、住民にとって頼れる相談相手です。


「今はね、田舎でもよその家に行くということが減っているんです。そんな中『調子はどうかね』って寄ってくれる大谷さんの存在はありがたいですよ。相談しやすいです。」と話す訪問先の女性。
農業関係や福祉関係など、さまざまな相談を受け、必要に応じて専門機関へ橋渡しをしています。訪問先では、野菜づくりの話や天気の話など、世間話を通じて自然な交流が生まれます。「私ができるのは、行政や関係機関につなぐ“パイプ役”くらいなもんですが、話すことで、地域の人の表情や体調の変化にも気づけるんです」。
「人と話すのが好きな方には、きっと向いている活動だと思います。地域の人を知ることは、自分自身の安心にもつながりますし、何気ない会話の中に大切な気づきがあります。私も、いずれは訪問してもらう立場になるかもしれません。だからこそ、今こうして地域の中で顔を合わせ、声をかけ合う関係を築いておくことが大切だと思うんです」。
大谷さんの訪問は、地域に暮らす人々の心にそっと寄り添い、見えない安心を届けています。