海士町で見つけた原点――母の言葉がつないだ未来

澤井帆希(さわい・ほまれ)30歳

山口からUターン。海士町出身。隠岐島前高校を卒業後、山口県立大学に進み、まちづくりを学ぶ。その後Uターンし、島前ふるさと魅力化財団で働く。

Q. Uターンのきっかけは。

隠岐島前高校の生徒だったとき、ちょうど「高校魅力化プロジェクト 隠岐島前教育魅力化プロジェクト」が始まったばかりのタイミングだったんです。

少子高齢化が進んで、高校や町そのものの存続が危ぶまれていた時期で、子どもながらに「このままじゃ島がなくなっちゃうかもしれない」っていう不安がずっとありました。

その中で、島のために本気で動いている熱い大人たちがたくさんいたんですよ。地域 島のために一生懸命な姿を間近で見て、「自分もいつか島に貢献したい」って思いました。

その中には、島の診療所で看護師として働く母親の姿もありました。大学で地方創生やまちづくりを学んだのも、あの時の熱い大人たちの姿があったからです。

「いずれは島に帰りたい」という思いがありましたが、「自分は島の役に立てるのかな」という葛藤を感じ、帰ることを躊躇する気持ちもありました。

でも、帰省するたびに、「帰ってきたらいいが」と声をかけてくれる島の人たちの温かさや、「やりたいことをすればいい」という母の言葉に後押しされ、Uターンを決めました。

Q. 海士町に戻ってきてどうですか。

島では、夢だった地域に貢献する仕事につくことができ、島の人たちも喜んでくれています。島に戻ってきて一番感じているのは、やっぱり生活がすごく楽になったってことですね。

通勤時間はすごく短くなりました。その分、余暇の時間が増えて、ハンドメイドでのアクセサリー作りを再開しました。海岸に出かけて波の音を聞きながら読書をしたり、穏やかな時間を過ごせています。残業もほとんどないし、生活のリズムが整って、心に余裕ができた感じです。

あらためて親が近くにいてくれることの安心感にも気づきました。頼れる存在が身近にいるありがたさを感じます。

島前ふるさと魅力化財団では 教育事業部 総務部 に所属していて、島と高校 財団の信頼を守り、財団と島 をつなぐお手伝いをしています。

母の実家の島で唯一の本屋が閉店したのをきっかけに、本屋の復活プロジェクトを始めました。本屋をみんなが集まれる場所、ちょっと休めるサードプレイスみたいな場所にしたいと思っています。

Uターンを受け入れた親の声

Q. 子どもが島根を離れる時、どのような思いでしたか。

もともと娘は人付き合いが得意な子ではなくて、本ばかり読んで過ごしていました。中学の頃は、外の世界でやっていけるのか心配していましたが、高校に進学してからは、人と関わる力が少しずつ身についてきたように感じました。先生からも「すごく変わった」と言われて、家族もその成長を感じていました。

大学進学で島を離れる時は、「4年間楽しんでおいで」という気持ちで送り出しました。ただ、本人は「じゃあね」という感じで、あまりにもあっさりとした別れだったので、少し寂しさを感じました。離れ離れになるけど、彼女の夢を応援したい思いでした。

Q. 子どもが帰って来てどうですか。

娘もいろんな経験をして、たくましくなったなと感じます。本人が希望していた地域に貢献できる仕事をしている姿を見ると、うれしいですね。

近くで暮らしているので、よく一緒にご飯を食べたり、実家に帰ってきたりしています。同じ島にいるという、この近い距離感に幸せを感じます。

親子レター 子から母へ


離れて暮らしていても、大した相談もせずに大きな決断を「決めたこと」として、ぽんっと報告しても、ずっと見守って支えてくれて、本当にありがとう。

私の決断をいつも「自分で決めたなら、やってみたらいいよ」と受け止めてくれるお母さんのおかげで、ここまで走り続けてこられました。

いろんな場所で学んできたけれど、どこにいても心の片すみにあったのは、島で働きたいという気持ちでした。それは、お母さんをはじめ、あの頃そばにいてくれた熱い大人たちの姿が、ずっと私の原点になっていたからだと思います。

これから私は、島で「ブックスたなか」をもう一度ひらくという挑戦をしてみようと思っています。

まだまだ心配をかけることもあると思うけれど、どうかこれからも見守っていてください。

お母さんには元気でいてほしい。無理をせず、体を大切にしてね。

いつもありがとう。これからもよろしくお願いします。


手紙を読んだ母の感想


普段はあまりこういう話をしないので、改めて気持ちを伝えてもらえてありがたいです。海士町のために頑張ろうとしている姿を見ると、うれしいです。これからも応援しています。


 


~記者の編集後記~

島を離れ、さまざまな経験を積んで戻ってきた彼女を、温かく迎えたお母さん。取材を通して、親子の間にある深い信頼と支え合いの歴史が、言葉の端々から伝わってきました。

小さな頃から本好きで、人付き合いが得意ではなかった娘が、地域に貢献する仕事に挑戦するまでの歩み。その背景には、見守り続けた母の存在と娘にかけた言葉がありました。

皆さんも、県外で頑張っているお子さんに「帰ってきたらどう?」と声をかけてみてはいかがでしょうか。きっと、新しい未来が広がるきっかけになるはずです。

数字で見るしまねライフ

仕事が終われば、すぐそこに家があって、
家族みんなで食卓を囲める。

自分のやりたいことに使う時間もある。
島根にあるのは、そんな、ごく普通の暮らしです。

もし、今の生活に疲れを感じていたら、
あなたらしい暮らし方は、島根で見つけられるかもしれません。


仕事

自分らしく働きたい!ワークライフバランスが大事!
あなたを必要としている、あなたにピッタリの職場が見つかります。
通勤時間が短く、帰宅後はしっかりリフレッシュできます。
 
仕事時間

7時間48 (全国平均8時間3分)
(土日を含む週全体の平均)

仕事時間の短さは全国4位。ノー残業を推進する企業も多く、その分趣味の時間を増やすなどプライベートの時間もしっかり確保できる。

※R3社会生活基本調査(総務省統計局)


通勤・通学時間
往復1時間1(全国平均1時間16分)

(土日を含む週全体の平均)

島根県ではマイカー通勤の人が多く、満員電車もほぼ無縁。
「今日は夕陽がキレイだから海に寄って帰ろう」など、
気ままに自分のペースで通勤できる。
※R3社会生活基本調査(総務省統計局)
 

帰宅時刻

18:07(全国平均18:34)

帰宅時間の平均は18時7分。夏ならまだ明るい時間に帰宅することができる。スポーツで汗を流すもよし、家族団らんの時間を大切にするもよし。
※R3社会生活基本調査(総務省統計局)
 

若者の就業率

全国1位※15歳〜39歳で算出したもの

若者の就業率は堂々の全国1位。地元企業の活躍や多様な雇用機会の提供により、職種も働き方も自分に合った仕事が見つけやすい環境だ。
※R2国勢調査(総務省統計局)
 


暮らし

自然の中でゆっくり過ごしたい!広い家でゆったり住みたい!
くつろぎながら、自分の生きがいのために時間を使えます。
新鮮な食べ物や温泉も豊富で、潤いのある暮らしが満喫できます。

交通事故
発生件数の少なさ 全国1位(道路実延長千km当たり)
死傷者数の少なさ 全国2位(人口10万人あたり)

慎重でおっとりしている県民性のせいか、交通事故の発生率の
低さは堂々の全国一。都会に比べると交通量も少なく治安も良く、安心して暮らせる。
※社会生活統計指標2024(総務省統計局)

一般診療所数
全国2位(人口10万人あたり106施設)

赤ちゃんからお年寄りまで、必要な時にしっかり医療を受けたいもの。
島根県における人口10万人あたりの一般診療所数は全国2位と
安心の数字である。
※R5医療施設調査(厚生労働省)


住宅地価格
20,400円/m2(東京圏平均:237,800円/㎡)
安さ 全国5位

島根県の住宅地価格は東京圏の10分の1以下。
土地価格が安い分、敷地の広さや家にお金を掛けられるのもメリット。
※R6都道府県地価調査(国土交通省)


睡眠時間

8時間00分(土日を含む週全体の平均)

100歳超えのご長寿の割合日本一や「ニッポン美肌県グランプリ」でグランプリを全国最多の5度受賞など、美容&健康にはちょっと自信のある島根県。たっぷりの睡眠時間もその秘訣の一つである。

※R3社会生活基本調査(総務省統計局)


子育て

結婚・出産しても働き続けたい!
子どもをのびのび育てたい!
仕事をしながら「子どもをもう一人育てたい」という希望もかなえやすい環境です。 自家用車を持ちやすく、通勤途中に保育所の送り迎えもできるので、雨の日でも快適です。

育児をしている女性の有業率
86.8%
全国3位 (全国平均73.4%

働くお母さんが多く、島根県は全国3位。 仕事を続けながら子育ても楽しみたいという希望を かなえやすい。
※R4就業構造基本調査(総務省統計局)

保育所待機児童数

0人 (全国計2,254人) ※令和7年4月1日現在

保育の受入体制が充実し、近年の待機児童はほぼ発生していないなど、安心して子どもを預けられる環境があります。医療費助成など、子育ての経済的な負担の軽減など支援体制も充実。
※保育所等関連状況取りまとめ(R7.4.1)(こども家庭庁)

合計特殊出生率
1.43
全国3位 (全国平均1.15

子沢山ママも多く、合計特殊出生率は全国6位。 自然が多く、治安も良く、子どもたちにとっても健やかな環境で成長することができる。
※合計特殊出生率:15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの
※R6人口動態統計 (確定数)(厚生労働省)