見守りつなぐ地域のぬくもり

平田で「ファミリー・サポート・センター」のまかせて会員として活動を続ける田中芳子さんは、地域の子育てを27年にわたり支えてきました。
きっかけは平成10年、光幼稚園(現・認定こども園光幼保園)を退職した年に、平田でセンターと子育て相談室が立ち上がると聞き、「手伝ってみませんか」と声を掛けられたことでした。
田中さんは同じ部屋で子育て相談員として関わりながら、自然と預かりや送迎の支援にも携わるようになりました。
長年の幼稚園教諭としての経験を生かし、「必要としている家庭の力になれたら」との思いで歩みを重ねてきました。

活動のやりがいは、子どもたちの成長を間近で見守れることにあります。
赤ちゃんの頃に預かった子が、進学・就職・結婚の節目に「ただいま」と顔を見せてくれることもあります。
かつて支えた子が親になり、その子どもを再び預かる——そんな世代を超えた“再会”も珍しくありません。
田中さんは「血縁がなくても、私にはたくさんの孫やひ孫がいるような気持ちです」と微笑みます。
こうした長年の取り組みは評価され、令和2年度には島根みんなで子育て応援賞を受賞しています。


田中さんは、支援を「家族の一部として寄り添う時間」だと捉えています。
送迎の車内で学校での出来事を聞き、お迎えの際には保護者の不安に耳を傾けます。
支える側である自分が、時には子どもや保護者から元気をもらうことも多く、互いに助け合う関係が自然と育っていきます。


「無理はしないこと。できる範囲で続けること。それでも十分に誰かの助けになります」と田中さんは語ります。
子どもと向き合う時間の中で喜びやエネルギーが返ってくることで、人とのつながりが日々にほどよい充実感をもたらしてくれるといいます。

子育ては家族だけで抱え込むものではありません。
困ったときに「お願いします」、余裕ができたときに「今度は私が」とバトンが渡っていくことで、地域はやさしく、そして強くなっていきます。
田中芳子さんの27年の歩みは、その確かな手触りを静かに、そして力強く示しています。


