「休んでいいよ」が当たり前の職場へ 社員の声が変えた働き方
コンコン咳をしている子どもを、もっと早く病院に連れて行ってあげたかった――。仕事を優先せざるを得ず、結果的に風邪を長引かせてしまった。
働くお母さんなら、誰もが覚えのあるもどかしさかもしれません。

株式会社ひろせプロダクト(安来市広瀬町)の取締役で総務・人事を担当する鉄本真理さんは、こどもを早く病院に連れて行けず、結果的に風邪を長引かせてしまった経験を持ちます。
子どものことが心配で頭の中がいっぱいになりながら業務をこなす日々。「社員にはこんな思いをさせたくない」。その強い思いが、同社の働きやすい職場づくりの出発点になりました。
最初に取り組んだのは、キッズスペース付きワーキングルーム「WithRoom」の設置です。保育園の急な休園で「働きたいのに休まなきゃいけない」という社員の声を受け、子どもを連れて出勤できる環境を整えました。


利用時は専任の見守り担当を配置し、安心して働ける体制をつくっています。現在は事務所と離れた場所にありますが、建て替え時には事務所と一体化させ、より使いやすく改善する計画です。
次に、社員全員にアンケートを実施し、「子育て・育孫応援休暇制度」を創設しました。くるみん認定(※)の取得を目指したことがきっかけです。育児世代だけでなく、孫の世話をする世代にも対象を広げたのが特徴で、当日申請可能、時間単位の取得もでき、入社直後から利用できます。
女性社員の約7割が子育て世代、男性は育孫世代が多く、不公平にならないよう配慮しました。取得率は約85%に達し、子どもの部活の遠征や行事にも活用されています。

3つ目は、看護・介護休暇の有給化です。看護・介護休暇は有給休暇として義務化されていないため、無給としていた以前は利用者がほとんどなく「仕方なく取る人しかいない」状態でした。
また、休んだ分の給与を差し引く処理が必要でした。鉄本さんは「家族のために休んでいるのに給与が減る。その処理をする側としても心苦しかった」と振り返ります。有給化したところ、取得者が大幅に増加しました。
時間単位で取得する社員が多く、子どもの通院の付き添いなどに活用されています。子どもを早く受診させることで回復も早く、社員も安心して仕事に集中できるため、結果的に会社にもメリットがあります。


制度の導入だけで、職場の文化も大きく変わりました。5〜6年前は「私ばかり休んで悪いな」という罪悪感があったと思います。また属人的な業務が多くて、誰かが休むと業務が停滞し、生産性低下のリスクもありました。このため、各部署を2人体制にして業務の属人化を解消し、生産計画にも余裕を持たせました。今では「休んでいいよ、私やっとくから」と、声を掛け合って、自然と支え合う雰囲気が生まれています。
製造チームの高橋はるなさんは「子どもの部活の遠征に休暇を使って一緒に行くことができるし、周囲も応援してくれています。前職では休むと仕事が溜まるので負担でしたが、業務を共有できる体制が整っているので安心して休めます。」と話します。
加納さくらさんも「「With Room」のおかげで子どもを連れて出勤でき、周囲も温かく迎えてくれます。社員の声をいつも前向きに受け入れ、立場に関係なく意見が言い合える雰囲気があります」と語ります。

こうした取り組みの根幹にあるのは、「社員は何よりも財産。社員一人ひとりが健康に長く働ける職場をつくりたい」という鉄本さんの信念です。年間約4回のアンケートで社員の声を拾い、効果を数値化しながら制度を見直し続けています。
今後はマニュアル整備によるジョブローテーションの実現と、リフレッシュ休暇の新設を目指します。
事務の社員が現場に入ったことで作業環境の改善につながった経験もあり、部署を越えた相互理解が次の課題です。「会社ごとに必要なものは違う。だからこそ社員の声を聞き、自社に合った制度を育てていきたい」。鉄本さんの挑戦は、止まりません。

株式会社ひろせプロダクト
(1)子育て支援
① 【育児目的の休暇制度の導入】
社員アンケートの結果をもとに、実際のニーズ に即した新たな休暇制度を導入。→ 「子育て・育孫応援休暇制度」 を創設し、 子どもや孫の行事・通院等に活用可能。
② 【キッズスペース付きワーキングルームの設置】
育児中や育休中の社員の「働 きたい」という想いを叶えるため、社内にキッズスペース付きの「WithRoom」を 設置。→ 子どもを近くで見守りながら安心して仕事に取り組める環境を提供。
③ 【看護・介護休暇の有給化】
法定の看護・介護休暇を有給扱いとすることで、 家庭での看病・介護による経済的負担と心理的負担を軽減。→ 働きながら家族を 支えることができる環境整備を推進。
(2)社員の健康増進
①【健康診断の100%受診と特定保健指導を100%実施】
早期発見・早期対応により、重症化を防止
②【ストレスチェックの受検率100%】
メンタルヘルス対策の強化と職場環境の見直しに活用
③【労働安全衛生・災害防止への取組安全意識の向上を目的とした安全衛生研修を定期実施】
安全で快適な職場づくりを推進
④【健康維持のための社内スポーツ部を発足】
運動習慣を支援
⑤【アシストスーツの導入】
業務上の身体負担軽減
⑥【リカバリー支援】
社内マッサージやストレッチ指導などを実施することによる休養促進
