自販機が支える休日、笑顔が広がる職場

日曜日に、家族とケーキを食べる。そんな当たり前のことが、自分たちにはできなかった。
有限会社松江クロードは、創業47年の老舗の洋菓子店。専務取締役の石川理早さんがそう振り返るのは、週1日しか休みがなかった頃のことです。
2020年、働き方改革セミナーに参加し、「自社が何もできていないことに愕然とした」と言います。求人を出しても応募が集まりにくくなっていた時期でもありました。

まず着手したのが休日の見直しです。週1日だった定休日を月木の週2日に変更。それでも年間休日105日に届かず、社長と何度も相談を重ねた末、業界では異例の月1回の「日曜休み」を導入しました。「お客様をがっかりさせないか、葛藤があった」と石川さんは振り返ります。



定休日を増やすことによるもう一つの懸念は、売上の減少でした。そこで導入したのが、お菓子の自動販売機です。きっかけはコロナ禍での非接触ニーズと、「せっかく来てくれたのに閉まっている」というお客様への罪悪感でした。

導入してみると、24時間販売が可能になっただけでなく、形が崩れた商品も自販機に入れると喜んで買ってもらえるなど、フードロスの削減にもつながりました。
何より良かったのは、スタッフが休みの翌日に「家族と遊びに行ってきました」と嬉しそうに話してくれるんです。自販機も、「日曜休み」も入れてみたらいいことばかりでしたと笑います。


さらに、時間単位での有給休暇制度も導入しました。子どもの送迎や学校行事に柔軟に対応できるようにするためです。
有給休暇取得率は高いですが、「うちのスタッフは皆、仕事熱心で、すごく頑張ってくれるので、つい休みを取り忘れる人がいる」と石川さん。「休んで身体を休めてね」と休暇取得の大切さを伝え続けています。

自動釣銭機の導入でレジ業務の時間も短縮しました。機械化できるところは機械化し、人の作業でないといけない仕事に集中する。そうして生まれた時間を、技術の向上や密度の高い仕事に充てています。

従業員の山田真梨さんは「お客様の多い日曜を店休日にするなんて、すごい決断だったと思います」と当時を振り返ります。休みが増えたことで、子どもの参観日や一緒に旅行に行けるようになった、とスタッフ同士、話が弾むんですよ、と山田さん。
また、スタッフ全員が参加する研修が定期的に開催されるので、事務や販売、製造など持ち場に関係なく、20代から70代まで幅広い年代のスタッフ同士の意思疎通がしやすくなったと言います。
石川さんにはもう一つ、大切にしている挑戦があります。米粉を使ったアレルギー対応のお菓子の開発です。

以前から要望はありましたが、バターや卵を使わないと美味しくならないと断っていました。しかし、「給食でみんなと一緒に食べて笑顔になってほしい」という思いから、社員がいろんなアイディアを出し合って、真剣に取り組んでくれて、ついに納得のいく味にたどり着きました。今後は、全国へ広げていくのが今の目標です。

「自然に笑顔がうまれる世界を作る」の理念を軸に、家族経営から、スタッフを大切にする組織経営への転換を進めています。「一生懸命つくって、きちんと接客する。その姿を見てここで働きたいと応募してくれる人がいる。すべてはつながっているんだと最近思います」。
地元からも、スタッフからも愛されるお菓子屋であり続ける。石川さんの挑戦はこれからも続きます。

有限会社松江クロードの取り組み
(1) 労働意欲増進
① 【月1回の日曜及び週2日の定休日を導入】
従業員の健康維持とプライベート時間の充実を図るため、月1回の日曜及び週2日を定休日とし、従業員の労働意欲の増進に取り組んでいる
② 【時間単位での有給休暇制度の導入】
子育てや子供の送迎・学校行事等に柔軟に対応できるよう、時間単位での有給休暇制度を導入
(2)休み方改善の実現・継続
① 【お菓子の自動販売機の導入】
定休日が増えても売り上げを確保し、従業員の雇用を守るため、お菓子の自動販売機を導入
② 【月1回の日曜日店休日の導入】
業界としては異例だが、会社全体で休むことで、日曜日に家族と過ごす時間を確保する
③ 【自動釣銭機の導入レジ業務の時間短縮】
