第2回連歌甲子園入選句
◎一部、添削した作品があります。ご了承ください。
◆課題1◆
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数学のにがてな君も大丈夫
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【大賞】
私の指も貸してあげるよ
(大東) 井田 めぐみ
【評】人の指を借りるにしても、せいぜい20まで。それぐらいの計算はだれでもできそうなもの。極端な誇張で大賞獲得!
【優秀賞】
星の数だけ人生がある
(北海道・北嶺) 泉 正彦
【評】人生さまざま、おおらかに生きましょう。もっとも、この句、単なる開き直りとも取れないことはない。
のび太くんより点数いいじゃん
(出雲工) 内田 拓也
【評】のび太くんと比べて慰められるのは、ちょっと寂しい。でも、それを寂しいと感じないぐらいの明るさがあれば、数学の苦手な君も大丈夫。
大恋愛に公式はない
(境港総合技術) 西山 亮太
【評】ごもっとも。前句の「数学」とぜんぜん関係のない「恋愛」を持ってきたところがおもしろい。しかも、「公式」という「数学」の縁語を用いた点が、お手柄。
家庭教師と恋に落ちた日
(大東) 渡部 智樹
【評】これも恋の句。でも、こちらは多少、打算めいたものを感じないでもない。昔のことばで「色仕掛け」という。それよりはずっとドライな感じではありますが…。
お申し込みはフリーダイヤル
(川本) 上田 晋司
【評】前句を塾かなにかの広告と取った作品。そのテの作品は数多くあったのですが、これは、その宣伝の文句をそのまま続けたおもしろさ。「フリーダイヤル」というのが、いかにもありそうで。
税込み価格のコンビニのレジ
(浜田水) 坂本 珠里
【評】100円ショップで買い物するなら消費税はすぐ計算できるけれど、110円の缶コーヒーになると、もうややこしい。レジに任せておくのが一番。ただし、この句は売るほうの立場らしい。学生アルバイトか。
家庭科もある体育もある
(川本) 竹下 順子
【評】もちろんいろんな科目があります。でも、ここは、家庭科と体育を持ってきたところがミソ。国語と英語みたいな、いわゆる「主要」科目だったら、ぜんぜんおもしろくない。
貼り紙見つけ飛び込んだ夏
(浜田水) 永見 有佳子
【評】「飛び込んだ夏」という言葉の続けかたは素人ばなれしている。加えて、だまされた、なんてぜんぜん言ってないのに、後悔の念が言外に表現されていてお見事。
教えるあの子はまだ小学生
(大東) 原 希望
【評】家庭教師を頼まれたけど、自信はない。自信はないけど、やっちゃえ。子供の親にとってはいい迷惑。お金をドブに捨てるようなもの。
円周率は3になるから
(出雲) 吉岡 美貴
【評】円周率が3に「なる」わけはもちろんないけれど、こう言い切ったところがおもしろい。「ゆとり教育」がゆとりになっていないことに対する痛烈な批判。
◆課題2◆
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もういいかげん覚えてください
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【大賞】
体操と新体操は別競技
(開星) 福田 真大
【評】なるほど、ことばは似ているけれど、中身はぜんぜん違う。うまく思いついたものです。選考委員全員絶賛!
【優秀賞】
中川家小さいほうがお兄さん
(境港工) 足立 直也
【評】漫才コンビにはよくあること。ふつうの兄弟でもよくあること。神様のいたずらか。
僕の名はヒラメではないカレイです
(江津工) 都志見 かおり
【評】とうぜん人間の話と思わせておいて、実は魚、という意外性。ヒラメとカレイとは、素人目にはたしかにまぎらわしい。ちなみに、目が左に偏っているのがヒラメです。「ヒ」がつくからと覚えましょう。
何回も君んちどこと聞くあなた
(熊本・県立第二) 野田 聡美
【評】よっぽど物覚えが悪いのか。いやいや、そうではありますまい。どうやら相手の気を引こうとしているのらしい。度を越すとストーカーになる。
貝殻は何だかんだで燃えるゴミ
(浜田商) 中野 雄大
【評】貝殻が燃えるゴミ? 私も早速、松江市のホームページで確かめてみました。間違いありません、燃えるゴミでした。「何だかんだで」とは書いていませんでしたが。
パソコンに言われてるよな気がします
(出雲工) 山崎 佳奈子
【評】身につまされます、私も。でも、これ、ほんとうは人間が悪いわけじゃない。テレビみたいに簡単に扱えるように、早くならない機械が悪い。
あと五万お金出したくないでしょう
(愛知・豊橋) 鳥居 和人
【評】自動車学校の補習でしょうか。補習をすれば学校はもうかるはずですが、この生徒には先生もよっぽどネを上げている様子。早く卒業してくれ!
島根って砂丘があるんですよねぇ
(開星) 中野 加奈子
【評】島根県と鳥取県、隣どおしで、字も似ている。それにしても、鳥取砂丘が島根になんかあるわけない、と山陰の人間なら思いますが。でも、甲子園って大阪じゃなかったんですかねぇ。
そこのネコお前の家はとなりだぞ
(大東) 佐藤 智昭
【評】ネコというのは、よその庭でも平気で入ってくる。あれ、知っていて入ってくるんですね。だから、ほんとうは、こんなこと言ってもムダなのです。
違いますうちはソバ屋じゃありません
(大東) 田中 一樹
【評】いつもいつもソバ屋と間違えられたんじゃたまらない。相手がそそっかしいのだから、たまにはすなおに注文を受けておきましょう。まいどあり~ッ!
なぜするのオテと言うのにオスワリを
(浜田水) 松本 章宏
【評】このワンちゃんはほんとにダメなのか。何かは確かに覚えております。利口でないとは言い切れない。人間だったら、ちょっと始末におえないタイプ。
2017年5月13日 無断転載禁止