世事抄録 17文字のすごみ

 テレビバラエティー番組の俳句コーナーが人気を呼んでいる。俳人夏井いつきさんの容赦ない辛口の添削が17文字の魅力を際立たせている。

 俳句とは無縁ながら、番組を見る度に鬼籍に入った2人の俳人を思い出す。紫綬褒章も受賞した村越化石さんとは、群馬県草津町にあるハンセン病療養施設「栗生楽泉園」で初めて会った。戦後の特効薬が間に合わず最重度の後遺症が残ったが、社会から埋もれた自分を「化石」になぞらえ、俳句に、生まれてきた証しを追い求めた。

 代表作「人の死をうらやみすする寒卵」には、死を願いながらも捨てきれない生への執着がにじむ。どの作品にも刃でけさ懸けされたようなすごみがあった。

 そんな感想を、化石さん同様、蛇笏(だこつ)賞などを受賞した俳人、桂信子さんに伝えると、好きな俳人の一人という返事が返ってきた。桂さんは新興俳句の旗手、日野草城門下で、師の自由な句風を守り苦難の道を歩んだ。清涼で叙情あふれる作品で知られたが、晩年の「忘年や身ほとりのものすべて塵(ちり)」には、執着を断ち切る潔さがあり、化石さんと重なる峻烈(しゅんれつ)さが伝わってきた。

 「俳句のような小さなものでも打ち込むことがその人の精神を強くする」という化石さんの言葉や、晩年までみずみずしい精神を保ちながら句作に精魂を傾けた桂さんの姿が今も思い浮かぶ。

(出雲市・呑舟)

2018年9月20日 無断転載禁止