世事抄録 新車に託した誓い

 夏から秋にかけては、天変地異が日本列島を次々襲った。ニュース映像を見ながら、新しい時代はもっと異常気象が進むのだろうか、と不安になった。

 後期高齢者を目前にした私の中にも、小さなさざ波が寄せては返した。車検を来年に控えた愛車の進退問題である。新車購入を決めたのは7月中旬。15年間、故郷の鹿児島との往復を繰り返したシルバーのセダンは満身創痍(そうい)であった。

 11月初旬の引き渡し前日、丹念に洗車して、内部を清掃した。最後にボンネットに手を添え、礼を述べた。黙って耐えてくれた愛車に鶴田浩二さんの「傷だらけの人生」が浮かんだ。

 引き渡し当日も所用があり、約束の時間ギリギリまで働いてくれた。目の端にくすんだシルバーをとらえつつ、新しい相棒となった緑のコンパクトカーで帰路に就いた。

 翌日、修理工場の前を通ってみたが、姿はなかった。スクラップに出されたのであろうか。

 新車は最新の安全装置が搭載された賢い子だ。でも、システムに頼り切ってはいけない。「ゆっくり、キープレフト、助手席に人を」の誓いを立てた。

 新しい時代の夜明けに向かい、新車が老夫婦を乗せて順調に走りだした。平成最後の師走、今のところ静かに時が流れている。

 (浜田市・清造)

2018年12月13日 無断転載禁止