紙上講演 富士通総研エグゼクティブ・フェロー 早川 英男氏

早川 英男氏
2019年日本経済の展望

  景気の転換点が近づく

 山陰中央新報社の島根政経懇話会が21日、米子境港政経クラブが22日、松江市、米子市でそれぞれあり、元日銀理事で富士通総研エグゼクティブ・フェローの早川英男氏(64)が「2019年日本経済の展望」と題して講演した。景気拡大の転換点が近づいているとし、財政や金融リスクへの対応を訴えた。

 アベノミクスは円安・株高を実現し、国民心理を明るくした一方、安倍政権下の平均成長率は年1・2%弱で民主党政権期より低い。労働生産性の低迷を高齢者や主婦パートなど短時間労働者の増加で補っているのが実情で、1人当たりの生産性が上がらないため賃金も増えない。潜在成長率は全く上昇しておらず、成長戦略の機能不全は明らかだ。

 戦後最長の景気拡大が見込まれるが、ピークは好調な世界経済にけん引された17年末だった。既に成熟局面にある。19年度以降はさらに成長が減速する。米国も減税効果が薄れており、最高値更新を続けた株価は企業収益に比べバブルとの見方もある。米中貿易摩擦は中国だけでなく、サプライチェーンを通じて資本財や部品を供給する日本にも大きな悪影響を及ぼす。

 国内外ともに19年から20年にかけ景気転換点を迎える公算が大きい。問題はリスクへの対応余地が乏しいことだ。マイナス金利政策を続ける日銀は利下げ余地がないため、海外で金融緩和が行われた場合、大幅な円高は避けられない。円安に依存した企業収益へのダメージは大きいだろう。倒産が増えると、厳しい収益環境の銀行は、信用コストが増大する。金融システムの安定を揺るがす恐れがある。

 財政は、好況の現状でも拡張を続けており、基礎的財政収支の黒字化目標は先送り。ポイント還元など、消費増税対策のばらまきも目に余る。大幅に税収が減る後退期は深刻な状況に陥り、財政政策も手詰まりだ。利上げを行っている米国でも後退期の対応余地が乏しいと議論されているのに、日本では全くない。目を背けるべきでない。

2019年1月23日 無断転載禁止

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