世事抄録 狂歌の春過ぎ行く

 「令和」だコンニャクだと騒いでいるうちに桜が散り、統一地方選で声をからした諸氏は視界から消えていった。けれど安寧が訪れるわけもなく総理側近が消費増税延期と衆参同時選挙の観測気球をあげ、総理自身が撃ち落とす三文芝居。メーデーに天皇代替わりの日の丸を掲げ、金も無いのに10連休の夢を見る…。狂歌が幾つもできそうな奇妙な日本だ。

 目先がぐるぐる変わるから、われわれ庶民はだまされてしまう。つい2カ月前、世界的な株価下落で昨年10~12月期の公的年金運用実績は過去最大の15兆円近い赤字だと発表されたばかり。年金資金は売り抜け不能な株ゲームに費消され、戦時さながらの国債頼みの中、アベノミクスは6年を経てなお「道半ば」という。だが年金損失、消費増税で予算審議は大荒れだと誰もが思ったのに、むしろ3月は例年以上に無風で過ぎた。国会も正気だとは思えない。

 テレビは密室の茶の間へ“日本スゴイ”番組を流し続ける。しかし経済はお話にならず、世界幸福度ランキング58位、報道の自由ランキング67位、男女平等ランキングに至っては149カ国で110位と途上国並みになった。ジェンダー研究の上野千鶴子さんが東大入学式の祝辞で「弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想」に触れたが、果たして未来の官僚たちに届いたのだろうか。今年の晩春は殊のほか、冷気の戻りを感じる。

 (松江市・風来)

2019年5月2日 無断転載禁止