紙上講演 経済ジャーナリスト 井上 久男氏

井上 久男氏
自動車産業に迫る大変革の波

 移動手段提供する考え方

 山陰中央新報社の米子境港政経クラブ定例会と島根政経懇話会定例会が21、22日、米子市、松江市でそれぞれあり、経済ジャーナリストの井上久男氏(55)が「自動車産業に迫る大変革の波」と題して講演した。消費者の意識やニーズとともに「移動手段を提供する」という、メーカー側に求められる考え方と対応を説明した。

 自動車産業で「MaaS(マース)」という言葉がある。「モビリィティー アズ ア サービス」の略で、車を作るだけでなく、移動手段を提供するという考え方だ。今までの自動車はメーカーが作り、ディーラーに卸す。そしてディーラーから消費者が買うのが基本的なビジネスモデルだったが、消費者の中には自動車を利用はしたいが、保有したくないという人が増えている。

 販売店ではカーシェアのサービス提供が始まっている。関係者のインタビューでは、メーカーも販売会社も今後は車を「何台売ったか」ということも大切だが、お客さんに「何キロ乗ってもらったか」ということも大事になるという話を聞いた。

 ただ、車は使いたいが、持たなくてもいいという考えが増えるということは、その結果として、安全で、雨露をしのげて移動ができればいいと考え、(車の)ブランドが問われなくなることにつながり、大衆車メーカーにとっては危機と言える。

 一方、車を「移動手段」として考えた場合、地域で切実な問題になっているのが「移動難民」だ。兵庫県豊岡市は、市内の一部の民間バス路線が2008年に採算が取れないことを理由に廃止され、有償運送事業を始めた。まちづくりの観点から「モビリティー」を捉え、自治体主体の路線バスとしてワンボックスカーを、過疎地域などで走らせた。

 自力で移動手段がない高齢者が家の中にこもるようになると、健康上も良くない。車に一緒に乗り合うことでコミュニケーションが取れ、地域の見守り機能を果たせるようになっている。これは移動手段というだけではない。新しい流れに対応する力が、より重要になる。

2019年5月23日 無断転載禁止

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