紙上講演 防衛研究所地域研究部長 兵頭 慎治氏

兵頭 慎治氏
日ロ関係の現状と領土問題

 G20での条約合意困難

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が17、18の両日、浜田市と益田市であり、防衛研究所地域研究部長でロシア地域研究が専門の兵頭慎治氏(51)が「日ロ関係の現状と領土問題」と題して講演した。大阪市で開かれる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を前に、平和条約と領土交渉に対するロシア側の思惑や注目すべき点を解説した。要旨は次の通り。

 ロシアのプーチン大統領は2000年に就任し、24年まで最高実力者の地位にいる。権力維持のためクリミア併合やシリアへの軍事介入といった対外強硬路線で、国民に「強い指導者」を印象付けている。しかし、次の介入先が見当たらない。米国のトランプ政権と外交関係が悪化し、権力基盤がままならない状態となっている。

 反米連携で中国との関係強化にシフトしているが、プーチン氏の本音は親中路線に疑問を持っている。

 16年11月に出した対外政策概念では、地政学的バランスを保つため日本、インド、ベトナムを相対的に重視すると言及している。千島列島に最新鋭地対艦ミサイルの配備を進め、北極海航路を使う中国船舶をけん制する。政策概念と同時期から、ロシア高官が北方領土について安全保障の観点から話をするようになった。

 ロシアは日本に対して外交面で厳しい姿勢を見せ、G20で平和条約と領土交渉の大枠合意は難しい情勢だ。交渉には(1)双方の安定的な政権の維持(2)首脳間の個人的な信頼関係(3)米国の拒否権がない-という三つの前提条件が必要だと考える。今は戦後初めて全てがそろっている。

 ロシアは安倍政権が政治決断をできるかどうか、国民を説得できるかどうかを見据えた上で土俵に上がってくるのではないか。G20の日ロ首脳会談で、どの程度状況が変化し、関係が修復するか、注目する必要がある。

2019年6月19日 無断転載禁止

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